発表日は2025.03.13、発表主体は第一生命経済研究所の嶌峰義清シニア・フェローである。公表されたのは「資産運用のキホン ~その21:テクニカル分析を含めた日経平均株価の見通し~」で、ボリンジャーバンド、一目均衡表、MACD、RSI、24ヶ月移動平均からの乖離率といったテクニカル指標と、ファンダメンタルズから日経平均の先行きを論じたレポートである。分析の基準は3月12日終値であり、現在の相場水準ではない。
1. 資料の時系列と確認範囲
確認できた一次情報は次の二つである。古い順に並べる。
- 2025年3月時点:上記のDLRIレポート。日経平均の判定基準日は3月12日終値である。
- 2026年のセミナー資料(URLの日付より):楽天証券のセミナー資料PDF。取得した資料からは本文テキストを抽出できず、ブルベア投資信託の仕組み、取扱条件、コストを確認できなかった。このため、本稿では商品面の記述を一般論と目論見書で確認すべき事項に限定する。
以下の数値とテクニカル判定は、すべて1.のDLRIレポートに基づく。
2. 点検表で読む各指標(3/12終値時点)
以下はDLRIレポートの分析を、判断材料として読み直した点検表である。判定は同レポート執筆時点のものであり、現在の状態を示すものではない。
| 指標 | 判定内容(3/12終値時点) | 読み方の注意点 |
|---|---|---|
| ボリンジャーバンド | 2/28に終値で-2σを下回り、その後も-2σに沿う「バンドウォーク」が続く | 拡大したバンドが収束に転じる動きは未確認。3/7には-σ付近まで上昇 |
| 一目均衡表 | 2/3に雲を下抜け、2/20に遅行線が雲を下抜けて売りシグナル | 3/19に先行スパン1と2が再逆転し、雲がねじれた |
| RSI | 3/7に30%を下回り、売られすぎ圏へ | 同レポートは「近々反転して上昇トレンドに転じることを必ずしも示しているわけではない」と明記 |
| 24ヶ月移動平均 | 抜粋した本文では算出値を確認できず | 具体的な水準はレポート本文で確認する必要がある |
| MACD | 明確な転換シグナルは未確認 | ヒストグラムの水準から、下降トレンドが強まったとまでは言えないとしている |
上の数値はすべてDLRIレポートに基づく。同レポートは、2/28以降の下げを受けて「下落ペースはやや行きすぎ」とし、テクニカル面では明確な反発の材料はないと結論づけている。
筆者の見立て:四つの指標のうち大半は下方向を示すが、RSIの売られすぎ入りは「一旦のスピード調整」とも読める。指標は万能ではなく、矛盾する材料がある前提で扱うべきである。
3. 基準となるファンダメンタルズの要点
同レポートは、ファンダメンタルズでは景気や業績は悪くないと評価している。一方で、トランプ政権による関税政策の先行きに対する警戒感が強く、当面はリスク回避の流れが続くと見ている(出典:DLRIレポート)。また、米国の関税引き上げや日銀の利上げ観測を、株式にとってのリスクとして挙げている(出典:DLRIレポート)。
同レポートは関税判断の期限に触れつつ、「延長はあり得る」とも明記している。つまり、期日は確定した事実ではなく、政策次第で動く前提である(出典:DLRIレポート)。
4. ヘッジ道具のコストと損失の出方
ヘッジ手段は、資金効率、値動きとの関係、払うコストの場所で比較する。
| 手段 | 日次の値動きとの関係 | 向いている保有期間 | コストの払い方 | 誤判断時の損失の出方 |
|---|---|---|---|---|
| 現物の一部売却 | 保有比率を直接減らす | 期間を問わないが、再参入の判断が必要 | 売買コストと再購入の機会損失 | 反発局面で取り戻せない |
| 先物の売り | 指数に連動 | 証拠金と限月の管理が必要 | 証拠金の拘束、建玉の管理 | 逆行時に損失が拡大しやすい |
| ブルベア投資信託 | 日次で目標の値動きを追う仕組み(一般論)。長期保有では指数の値動きと一致しない場合がある(一般論) | 短期の下落局面向き(一般論) | 信託報酬などを目論見書で確認 | 反発時に値上がり益が減る |
上の表は一般論を整理したものである。楽天証券の資料からは商品の具体条件を確認できなかったため、ブルベア投資信託の数値や条件は、以下の項目を目論見書と交付運用報告書で個別に確認すること。
- 信託報酬と、基準価額の算出方法
- 取引時の売買価格の差(スプレッド)と税金
- 過去の運用報告書における指数との乖離
- 保有期間の想定と、日次リセットの影響
ブルベア投資信託は、ヘッジとして持っても損失を防ぐ保険ではない。コストを払って下落の一部を取りにいく判断である。
5. ヘッジの決め方と撤退条件
ヘッジは次の順序で決める。
- 保有評価額を確認する
- 守りたい下落率の上限(許容損失率)を決める
- 守りたい金額を「評価額×許容損失率」で算出する
- ヘッジ手段を選ぶ
- ヘッジコストの上限を、守る金額より小さく設定する
撤退条件は、日付ではなく状態で決める。DLRIレポートは関税判断の期限に触れつつ、延長の可能性を明記している。期日だけで降りると、延長時に判断を誤る。
以下の時間帯別の判断基準は、同レポートの指標を使った筆者の手順案であり、資料による推奨ではない。
- 朝6時:前日終値が-2σの内側に戻っていれば、ヘッジ解消の候補として確認する(-2σの定義と判定はDLRIレポートに基づく)
- 前場(12時):朝の予想と照合する。予想が外れ、反発が雲の下で止まるなら、ヘッジは維持する
- 後場・引け後:終値で遅行線が雲を上抜ける、またはRSIが30%を回復して維持されるなら、解消を検討する(RSIの30%基準はDLRIレポートの定義による)
- 指標が割れた場合:保留とし、翌日の判断に回す
6. 失敗が起きやすい場面
よくある失敗は次の場面に出やすい。
| 場面 | 典型的な心理 | 警告サイン | 事前に決めるルール |
|---|---|---|---|
| 戻りを待つ逆張りの重ね | 「ここが底」という期待 | コストが守る金額を上回る | ヘッジ額の上限を先に決める |
| 下落後の後出しヘッジ | 損失が見えてから動く | 安値圏での買い増し | 発動条件を先に書く |
| 利益を取りにヘッジを外す | 効いているうちに降りたい | 指数が反転後に再上昇 | 解消条件を数字で決める |
筆者の見立て:ヘッジの成否は、方向を当てるかどうかよりも、コストと撤退条件を管理できるかで決まる。
判断前に、次の項目を紙に書き出すことを勧める。
- 守りたい金額:
- 許容コストの上限:
- 撤退条件(何が起きたら解消するか):
免責事項:本稿は投資勧誘を目的としない。判断は読者自身の責任で行うこと。引用した分析は2025年3月12日終値を基準としたものであり、将来の値動きを保証するものではない。資料の日付は2025年3月時点であり、現在の相場環境とは異なる可能性がある。
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