UL技術のアーカイブ化

使い古したUL装備と、静かな夜の記録

昨日、ベランダで古いスモーカーを引っ張り出して、チーズとベーコンを燻してみたんや。煙の匂いに誘われて起きてきた娘が「めっちゃ美味しい!」って喜んでくれてな、久々にゆっくり顔を見て話ができた。あんな何気ない時間が、実は一番の贅沢なんかもしれんな。

その帰り道、道具箱の奥から何年も使っているバックパックを引っ張り出したんや。湿った山の空気が染み付いたような、あの独特の匂い。今の最新装備と比べると随分と重たいし、あちこち解れも目立つ。でも、これと一緒に歩いた山行の記憶が、生地の擦り減り一つひとつに宿っている気がするんやわ。

消えゆく記憶を手のひらに

最近、UL(ウルトラライト)の考え方もどんどん変わってきてるな。昔、必死に削り出したはずの工夫や、夜な夜な考えた「あの山にはこの道具が最適や」という結論が、今の新しい技術やスタイルの中では、まるで古ぼけた化石みたいに扱われることもある。

自分が血眼になって積み上げた経験が、砂山が崩れるみたいに誰の目にも留まらず消えていく。そんな虚しさをふと感じることがあるんや。道具の形が変わり、使い方がアップデートされるのはええことやけど、そこに込めた「山とどう向き合うか」っていう文脈まで一緒に消えてしまうのは、なんだか寂しいもんなんやわ。

山の足跡は誰にも奪えない

だからと言って、全部をデジタルの中に保存して、完全に固定しようとするのもどこか違う気がする。実は最近、自分の山行の知見を少しずつ整理して、形に残そうとプロジェクトを始めたんや。でもな、いざ向き合うと「これって本当に後世に伝わるんか?」って疑問も湧いてくる。

山の斜面に刻んだ自分の足跡や、強風の中で震えながら結び直した靴紐の感覚は、データにはならへん。物理的なアーカイブには限界がある。でもな、こうして自分の技術や失敗を言葉に落とし込む作業そのものが、自分という人間を再定義して、今の自分を強くしてくれるんやと感じてるで。

執着を手放す山の朝

余談やけど、最近スーパーで売ってる特定のチーズが全然見つからんのや。あれが一番燻製に合うんやけどな、季節物なんやろか。こういう些細な「なくなっていくもの」への執着も、また山登りと同じかもしれんな。

朝日が差し込む山の山小屋で、コーヒーを淹れながら思うんや。道具も、技術も、いつかは摩耗して消えていく。その「変わり続ける」事実そのものを愛おしむのが、山を歩くということなんかもしれんな。

新たなブーツの紐を締めて

秋には、ずっと温めていた難易度の高いルートを単独で歩くつもりや。最新ギアを試すことも大事やけど、結局は自分の足と、これまで培ってきた勘が頼りや。

完璧な保存なんてない。せやけど、今この瞬間の自分を、嘘偽りなくアーカイブする。そう決めたら、なんだか肩の荷が下りた気がするわ。

皆さんは、自分が積み上げてきた経験や道具に対して、どんな風に折り合いをつけてますか? 結局、最後には何が残れば満足なんやろな。

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