
夜の静寂、本当の私を取り戻す15分
シンクには洗いかけのコップがひとつ。隣の部屋からは、夫の規則正しい寝息が聞こえてくる。ようやく私だけの時間なのに、スマホを手に取ってSNSを眺めては、指先だけで画面をスクロールして閉じる。そんなことの繰り返しで、気づけば時計の針は深夜1時を回っているんです。
「疲れた」の一言すら、誰にも言えない。そんな夜、私たちが抱える孤独には、まだ名前がないのかもしれません。
引き出しから出した古いノート
昨日、なんとなく引き出しの奥を整理していたら、ずっと昔に買ったままの小さなノートが出てきました。ページをめくると、少しだけ紙が黄ばんでいて。指先で触れると、当時の私が感じていた空気感まで蘇ってくるような気がしました。
余談ですが、スーパーで買ったばかりの新しいドレッシングが、どうやっても蓋が開かなくて。「もう、なんでこういう時まで!」って、自分でもびっくりするくらいムキになっちゃったんです。こういう小さな苛立ちの積み重ねが、今の私の正体なのかなって、ふと笑えてきました。
そんな風に思った勢いで、誰にも見せない、私のための隠れ家みたいなものを作ってみようかな。そう思って、ノートと鉛筆をテーブルに置いたんです。
15分だけ、自分を抱きしめる
やり方は簡単。タイマーを15分だけセットするの。この制限があるだけで、「ああ、15分経ったら終わるんだ」って、どこか安心できる気がして。
最初の一行を書くときは、なんだか少しだけ手が震えました。でも、ペンを走らせると、胸の奥で固まっていた澱(おり)のようなものが、少しずつ溶け出してくるみたい。
「本当は、もっと名前で呼んでほしい」「家事も育児も、たまには全部放り出したい」……。そんな言葉をノートに書き殴っていくうちに、自分でも驚くような本音がこぼれました。こんなに辛かったんだね、私。そうやって、自分の言葉をノートに預けていくんです。
書いている途中、タイマーが鳴る前に、ふっとペンが止まりました。もう十分だ、と感じたんです。
眠りにつく前の小さな光
書き終えたノートを閉じて、引き出しにそっと戻しました。しまい込むんじゃなくて、またいつでも取り出せる場所に。
寝室に戻ると、夫は変わらず眠っていました。その寝顔を見ても、以前のようなモヤモヤとした焦りはあまりありません。自分の中の「言えなかったこと」が少しだけ外に出ただけで、呼吸がずいぶんと軽くなった気がします。
今夜は、なんだかぐっすりと眠れそう。このノートの存在が、私をそっと支えてくれているような気がして。明日の夜もまた、このノートと静かな対話をする時間を楽しみにしながら、電気を消そうと思います。
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