
家に帰って、慌ただしく食卓に並べたのは、スーパーのコロッケと、作り置きのひじきの煮物、そして味噌汁。それを見た夫が、無神経にも「またこれ?」と呟いたんです。その一言に、私は何も言い返せず、心の中で「じゃあ、あなたが作ってみなさいよ」と毒づくばかりでした。
その日は、デイサービスから帰ってきた母も、食欲がないと一口しか食べず、結局ほとんど残してしまいました。「今日は鶏肉が食べたい」とか「味付けが濃すぎる」とか、日によって言うことがコロコロ変わるんです。介護中の母の食事と、食べ盛りが終わったとはいえ文句を言う夫の食事。もう、毎日献立を考えるのが苦痛でしかありません。
ヨシケイの箱が届いた日
そんな鬱々とした日々が続いていたある日、思い切ってミールキットの「ヨシケイ」を試してみることにしました。友人から「結構便利だよ」と聞いてはいたものの、なんとなく「手抜き」という罪悪感が拭えずにいたんです。でも、もう限界でした。
ヨシケイの5日間コース、1食あたり約600円。決して安い買い物ではありませんが、これで少しでもラクになるならと、藁にもすがる思いで注文しました。届いた箱を開けた時、なんだかホッとしたような、でも、ちょっとズルをしているような、複雑な気持ちになったのを覚えています。
実際に作ってみると、下ごしらえ済みの食材とレシピのおかげで、調理時間は本当に30分も短縮されました。さらに、私はこっそり業務スーパーの1kg350円の冷凍ほうれん草を常備して、少しでも下処理の手間を省いています。これを使うと、さらに10分くらいは時間短縮になりますからね。
ご飯には、はくばくの「十六穀ごはん」を混ぜて炊くのが私の密かなこだわりです。これだけで、見た目にも彩りが加わり、「ちゃんと家族の健康を考えてますよ」という"いい妻"感を演出できるんです。夫も娘も、まさか私がこんなに手を抜いているとは夢にも思っていないでしょう。
ある日、ヨシケイのメニューを出した時、夫が「今日の味付け、なんかいつもと違うね。美味しい」と言ったんです。その瞬間、私の心の中で、罪悪感はどこかへ吹き飛び、代わりに密かな優越感が芽生えました。そうそう、この前、娘が「ママのキャンプ飯、お店の味だよ!」って絶賛してくれた時も、こんな気持ちだったなと思い出しました。
鶏むね肉と浮いた30分。私は私だけの夜を取り戻す
ミールキットや冷凍野菜、雑穀米を上手に取り入れることで、私の生活はガラリと変わりました。何より大きかったのは、月に約8時間も自分の自由な時間が浮いたことです。最初は、この時間で何をすればいいのか戸惑いましたが、少しずつ自分のために使えるようになりました。
例えば、これまで豚バラ肉を使うことが多かったおかずも、こっそり鶏むね肉に置き換えるようにしています。家族は全く気づいていませんが、これで脂質を抑え、ヘルシーになっているはず。これも「いい妻」の仮面を被った、私の密かな健康計画です。
浮いた時間で、私はゆっくりと本を読んだり、昔から好きだった編み物を再開したりしています。夫や母の介護、子育てで、ずっと自分のことは後回しにしてきましたから、こんな風に自分のためだけの時間を持てるなんて、本当に久しぶりです。
完璧な手作り料理を毎日食卓に並べる「いい妻」「いい母」を演じるのは、もうやめました。誰のためでもなく、自分の心が悲鳴を上げる前に、賢く「ズル」をする。それが、50代からの私の生き方です。家族の健康はスマートに守りつつ、自分の心と、私だけの夜の時間を優先する。そう決めてから、毎日が少しだけ輝いて見えるようになりました。
あなたなら、もし月に8時間も自分の時間が浮いたら、何をしますか?
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