
登り始め15分で足が止まる、あの「焦り」
以前はもっと軽快に登れていたはずなのに、最近は登山の序盤で心拍数が跳ね上がり、ペース配分もままなりません。無理に登ろうとすると、すぐに息が上がってしまい、結局休憩ばかり増えてしまいます。同世代の友人たちも「昔は違ったのにね」とこぼす姿を見ると、私だけではないのだと少し安心するものの、やはり「このままでは山に行けなくなるのでは」という不安は拭えません。
「吸う」より「吐き切る」が大事
そんな悩みを抱えていた頃、私が趣味で続けている歌のボイストレーニングで、とても興味深い話を聞きました。先生がおっしゃるには、「深く吸うことよりも、いかに吐き切るかが重要」なのだそうです。肺の中の古い空気をしっかり出し切ることで、自然と新鮮な空気が体に入ってくる。無理に吸おうとしなくても、体は必要な酸素を取り込める、というのです。
私はこの「吐き切る」呼吸を、登山の時に意識して試してみることにしました。具体的には、「4秒吸って8秒吐く」というリズムを意識した深い呼吸です。すると、驚くほど心拍数が落ち着くのを感じました。私のSUUNTOデバイスのログを見ると、以前は登り始め30分で140bpmを超えていた心拍数が、この呼吸法を意識してからは平均12bpmほど低く推移したように思います。
ザックのベルト、たった1センチの発見
呼吸法と並行して、もう一つ見直したのがザックの装着位置でした。これまでウエストベルトを漠然と締めていたのですが、歌の姿勢を意識するようになってから、体の軸を意識するようになりました。そこで、ザックのウエストベルトを骨盤の少し上、腸骨稜にしっかり固定するよう見直してみたのです。
すると、腹部が圧迫されず、呼吸が格段にしやすくなったことに気づきました。以前はみぞおち辺りで締めていたかもしれませんが、それだと体が丸まりやすかったのかもしれません。体感ですが、深い呼吸がしやすくなり、一度に体に取り込める空気の量が増えたように感じます。もしかしたら、一回の換気量が500mlから700mlくらいに増えているのかもしれませんね。そういえば、先日ベランダで育てているミニトマトが、風で倒れそうになって慌てて支柱を立て直したのですが、あれも「土台」が大事だなと妙に納得してしまいました。
呼吸を味方に、山はもっと楽しくなる
これらの呼吸法とザックの調整を意識するようになってから、私の山行は大きく変わりました。YAMAPのログデータを見ると、以前より1回あたり平均10分ほど休憩が短くなったように思います。何よりも、登っている最中の「焦り」が減り、周りの景色を見る余裕が生まれたのが一番大きな変化です。
体力低下に抗うのではなく、年齢を重ねた自分の体と上手に付き合う術を見つけた喜びを感じています。肺活量を無理に増やすような特別な訓練は不要で、歌のボイストレーニングで培った「吐き切る」呼吸と、ザックのベルト位置という、ちょっとした工夫でこんなにも変わるなんて。何歳になっても、自分の行きたい場所へ自分の足で歩いていける喜びを、これからも大切にしていきたいです。次回の山行でも、この呼吸法とザックの調整を意識して、また新しい景色を見に行きたいと思っています。
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