洗濯物を畳みながら、ふと窓の外を見上げたら、雲ひとつない青空が広がっていました。こんな晴れた日なのに、私は今日も一日中、家の中をぐるぐる回っている。そんな毎日に、正直、もううんざりしていました。夫も子供もいる、幸せな家庭のはずなのに、なぜかいつも心は疲弊しきっている。

朝食の準備から始まり、夫の弁当、子供たちの着替え、洗濯機を回して、掃除機をかける。あっという間に昼になり、自分の昼食もそこそこに、夕食の献立を考え、買い物へ。帰宅すれば、休む間もなく夕食の準備、子供たちのお風呂、そして寝かしつけ。時計を見れば、もう夜の10時を過ぎています。

私だけの時間なんて、1分たりともありません。気がつけば、ぼんやりとスマホを眺めるのが唯一の休息。でも、それも本当の休息ではないと感じていました。「このままでは、私が壊れてしまう」そんな漠然とした危機感が、ずっと胸の奥にありました。夫は「手伝うよ」とは言ってくれますが、結局私が指示しないと動いてくれない。その「手伝うよ」が、逆に私へのストレスになっていたのです。

見えない労働を可視化

漠然とした不満を、具体的な形にできないか。そんなことを考えていた時、SNSで時間管理アプリ「タイムスタンプ」の存在を知りました。試しに1週間、自分の家事・育児にかかった時間を記録してみたのです。食器洗い、洗濯、食事の準備、子供の送迎、宿題の見守り…。一つ一つのタスクを、アプリで丁寧に記録していきました。

その結果を見て、私は衝撃を受けました。1週間の平均で、なんと25時間。これは、パートの仕事と同じか、それ以上の時間です。これまで「家事」として当たり前のようにこなしてきたことが、数値として「労働」だと突きつけられた瞬間でした。

「これは労働だ」。これまで心に蓋をしてきた感情が、一気に爆発しました。怒り、悲しみ、そして自分への憐憫。私の切実な願いは、週にたった5時間でいい。私だけの時間が欲しい。その具体的な目標ができたとき、「もう後には引けない」という覚悟が生まれました。この現実を、家族に突きつけるしかないと。

家族会議、ついに決行

夫と子供たちに「家族会議を開きたい」と伝えました。毎週日曜日の午後3時から45分間、議題は事前にGoogleカレンダーで共有することに。会議前は、正直なところ不安でいっぱいでした。夫はまた「手伝うよ」と言うだけかもしれない。子供たちは反発するかもしれない。でも、もう一歩も引けない。

会議では、まず「タイムスタンプ」で記録した私の労働時間をデータとして見せました。夫も子供たちも、その数字に驚いているようでした。私が「週に5時間、自分の時間が欲しい」と切り出すと、夫は案の定「わかった。何でも手伝うよ」と。私はすかさず、「『何でも』ではなく、具体的な役割を決めてほしい」と伝えました。

「例えば、あなたは週2回のゴミ出し。子供たちは、週3回の食卓準備をお願いしたい」と具体的に提示しました。夫は少し考えて、「わかった。やってみよう」と。子供たちも、最初は戸惑っていたものの、私が「ママが元気だと、みんなも嬉しいでしょ?」と話すと、少しずつ理解してくれたようです。

「母親が心身ともに健康になることで、家庭全体の幸福度が平均20%向上する」という研究結果があるそうです。それを知ったとき、これは決して私のわがままなんかじゃない、家族みんなのためなんだと、改めて確信することができました。

「お試し期間」に賭ける

家族会議で決まったことは、最初の1ヶ月間を「お試し期間」として運用し、月末に効果測定会議を開くことになりました。夫には、「もし家事参加率が平均30%向上したら、週末に夫婦で月1回のデートに行こう」と提案しました。夫はニヤリと笑って、「それはいいな」と乗り気でした。

会議後、少しずつですが変化が見られています。夫がゴミ出しをしてくれるようになり、子供たちも食卓に箸やコップを並べてくれるようになりました。まだ完璧ではありませんし、私が言わないと動かないこともありますが、それでも一歩前進です。

余談ですが、この間、スーパーで買い物をしていたら、昔の友人にばったり会いました。彼女も私と同じように子育てに追われているようで、「自分の時間なんて夢のまた夢よ」とため息をついていました。私は、まだ家族には言えない「秘めた欲望」を胸に、静かに微笑んでいました。もし自分の時間ができたら、私は何をしたいか。カフェでゆっくり本を読んだり、友人とランチに行ったり…。いや、もっと個人的な、誰にも言えないような「欲望」があるのです。

「家族に自分の時間をお願いすると、かえって負担をかける」という通説は、本当ではないのかもしれません。母親が心身ともに健康であることは、家庭全体の幸福度を高めるだけでなく、子供が家事に参加することで、自立心も育むと言われています。私のこの小さな一歩が、家族みんなの未来を良い方向に変えるきっかけになると信じています。

あなたなら、自分の時間ができたら、何をしたいですか?