
キコンパの入口は地下にあった。けれど、あの夜に本当に降りていったのは階段ではなく、自分の期待の深さだったのかもしれない。
四回目でも、初心者のままだった
本人記録には、都内の既婚者向け交流会へ四回目に参加した日と、その回に9,000円を支払ったことが残っている。別の回では小規模な合同形式で、男女比の偏り、食事の物足りなさ、参加費との釣り合わなさを強く感じた。これは業界全体への評価ではなく、あくまで僕が参加した回の主観だ。
不思議なのは、回数を重ねても会場の読み方が上手くならなかったことだ。席替えの合図、短い自己紹介、連絡先交換。仕組みは覚えたのに、相手が何を求めてそこにいるのかは最後まで分からない。地図記号を覚えても、霧の中の山頂までは見えないのと似ている。
同じテーブル、違う目的地
話してみると、目的は一枚岩ではなかった。飲み友達がほしい人、趣味の話をしたい人、家庭や職場とは違う刺激がほしい人、恋愛の可能性を探す人、ただ誰かに話を聞いてほしい人。同じテーブルに着いていても、目指す標高はそれぞれ違う。
僕自身も一つの目的だけで参加していたわけではない。会話への好奇心と、日常から少し外へ出たい気持ちと、もしかしたらという期待が混じっていた。その混線を『真面目な出会い』という一語でまとめた瞬間、相手の温度を勝手に採点し始めてしまう。服装や第一印象だけで相手の真剣度が分かる、という当時の見方も今なら危ういと思う。
恋の前に、現在地を言葉にする
標高差があること自体は悪くない。問題は、現在地を伏せたまま同じ山頂へ向かっているつもりになることだ。連絡先の交換をゴールにせず、自分が求める関係、できないこと、守りたい生活を短い言葉で伝える。その方が、会話の派手さよりずっと大切だった。
『標高差の恋』という物語の入口をキコンパに置くなら、恋が始まる場面より先に描きたいのはここだ。同じ会場にいることと、同じ方向を見ていることは違う。まず必要なのは、相手を攻略する技術ではなく、自分の現在地を誠実に示すことだった。
関連動画
参照資料
この回の関連本・ノート
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注:本人の会話・活動記録をもとに再構成しました。参加者や会場を特定できる情報は省き、複数回の経験を一つの情景に統合しています。特定の主催者や参加者を評価・告発する記事ではありません。