ただ、見ながらずっとひっかかってたのは「で、これ誰の何の課題を解決しとんねん」やった。
600時間の労作をゴミ箱に放り込んだ日のこと
3ヶ月ほど前、私は約600時間かけて作ったLangChainラッパーとRAGパイプラインのコードを全部消した。
「削除しますか?」のダイアログで一瞬止まった。でも迷いはほぼなかった。
作り始めた理由は「クライアントに差別化できる武器を持たないとあかん」という思いからやった。正直に言う。コードが書けることで、コンサルとしての説得力が生まれると本気で信じてた。
ただ維持コストがえぐかった。月に40〜60時間はメンテに吸われてた。GPT-4oが更新されたらリファクタリング。Claude 3.7が出たらまた手直し。しまいには「提案資料を作る時間がない」という本末転倒な状況になってた。
コードを捨てた瞬間、怖さより先に「ああ、やっと解放された」という感覚が来た。 それが答えやったんやと思う。
なぜ「デモ」を見せると客から信頼を失うのか
これ、最初は信じられへんかった。
「動くものを見せたら説得力が増す」と思い込んでたから。でも実際は逆のことが起きてた。
プロトタイプを持っていくと、クライアントの表情が微妙に変わる瞬間がある。それは「この人、自分のサービスを売りに来てる」という警戒心が生まれた瞬間や。デモを見せた途端、中立なアドバイザーという立場が崩れる。
もう一個、もっとやっかいな問題がある。
自社のRAGパイプラインがOpenAI依存やとする。そのクライアントが「AWS BedrockかGemini系に移行したい」と言い出したとき、私は何を言えばええんか。自分のツールが動かなくなるのに、純粋に「Bedrockがええですよ」と言えるか。言えへんよな。これが利益相反や。
McKinseyの2024年AI導入調査として広まってる話がある。AIプロジェクトが失敗する原因の約7割近くは「技術選定ミス」ではなく「組織変革設計の欠如」だというデータだ。一次ソースを手元で確認できてるわけやないが、私の体感とはかなり一致する。
クライアントが本当に困ってるのは「どのLLMを使うか」ではなく「AIを組織の中でどう動かすか」やから。コードがあると、気づかないうちにその問いから目が逸れてしまう。
コードを書かずに月単価150万を叩き出すための「意思決定の地図」
余談やけど、昨日コンビニで無糖の炭酸水を6本まとめ買いしてたら、店員さんに「お好きなんですか」って聞かれた。好きというより、コーヒーを飲みすぎると夜眠れへんから代替品として飲んでるだけや。習慣って本人が気づかないうちに固まるもんやなと、なぜかそのとき思った。コードを書き続けてたのも、似た構造やったかもしれへん。
Freelance Hub Japanの2025年版調査として出回ってる数字がある。AI実装アドバイザリーを専業とするフリーランスの平均月収は約187万円で、同スキルレベルのSESエンジニアの約2.4倍という話。断言できるデータやないが、肌感としてはズレてない。
市場に、Claude APIとAWS Bedrockを横断比較して技術選定できる独立アドバイザーがどれだけおるか。そんなに多くない。希少性ってそこから生まれる。
コードを捨てた後の私がやったことはシンプルで。Claude Sonnet 3.7とAWS Bedrock(Claude Sonnet 3.7ベース)のどちらをクライアントに薦めるか、その判断の根拠を徹底的に言語化した。
「コストはこのくらい違う」「セキュリティ要件がこれならBedrockの方が企業の稟議を通しやすい」「エンジニアリソースがない会社にはAPI直叩きよりフルマネージドのBedrockがリスク低い」——こういう選定の地図を、どんな質問が来ても即答できる状態にした。
コードは書いてへん。資料と言語化だけ。それを3社に持っていったら、3社とも話が進んだ。
AWS Bedrockのコストで言うと、Claude Sonnet 3.7ベースで入力100万トークンあたり450円前後という話があって、アーキテクチャ選定をミスると同機能で3〜5倍のコストになるケースがあるらしい。そういう「失敗したときのコスト」を知ってるアドバイザーがおるとおらへんとでは、クライアントにとっての価値が全然違う。
迷えるエンジニアへ:お前が守るべきは顧客の利益か、それともエディタの輝きか
「コードが書けないと信頼されない」という思い込み、私も抜けるのに時間がかかった。
でも考えてみてほしい。GPT-4oやClaude 3.7のアップデートのたびに自分のRAGをリファクタリングし続けながら、いつ顧客のことを考えるんや。追従することが目的になって、課題解決から気持ちが離れていく。それって誰のための仕事やったんか、という話になる。
ChatGPT EnterpriseとClaude APIとAWS BedrockとAzure AI Foundryが乱立してる今、クライアントが本当に求めてるのは「この中から、なぜこれを選ぶのか」の根拠や。その根拠を言語化できる独立した人間が市場にほぼおらへんから、単価が上がる。
ChatGPT Enterprise導入後の定着率が6ヶ月で34%にとどまるという国内調査の話も耳にする。66%の企業がライセンス費用を払いながら週1回未満の使用という状況ならば、その組織に本当に必要なのはツールの提案ではなく運用設計の伴走やと私は判断する。そこに需要がある。
月80万のSES案件をこなしながら「いつか高単価を」と考えてるなら、構造的に抜け出せない。時間がなくなるから。コードを書く手を止める勇気が先に要る。
守るべきは自分のコーディングスキルの輝きやなくて、クライアントの利益に対して中立でいられる立場や。
私はまだサービスパッケージを完成させてへん。動いてる最中や。ただ、コードを捨てた日から、ようやく前が見えてきた気がしてる。このあたりの動き、引き続きここに書いていく。
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