
「学資保険に入ってるから大丈夫」と、多くの親はそう考えているだろう。だが、それは本当に「大丈夫」と言えるのか。私から見れば、それはむしろ「確実な損失」を積み上げているようなものだ。
学資保険の「見えない損失」
多くの学資保険の平均返戻率は、良くても105%前後という話を聞く。つまり、100万円預けて18年後に105万円が返ってくる計算だ。一見、元本保証で安心に見える。しかし、この数字には物価上昇という要素が完全に抜け落ちている。
ここ数年のインフレ率を考えれば、18年後の105万円が、今の100万円と同じ購買力を持つとは到底思えない。実質的には、預けたお金の価値は目減りしている。これは、毎年少しずつ資産が削られているのと同じことだ。
一方で、全世界株式インデックスファンドの過去20年の平均リターンは、年換算で約6〜7%を記録している。もちろん、未来を保証するものではないが、この数字を前にして、学資保険を選ぶのが合理的な選択と言えるだろうか。私は子供たちの将来を考えれば考えるほど、「銭を働かせない」ことのリスクを無視できなかった。
口座開設は「最初の試練」
そこで、子供名義で証券口座を開設することにした。今はジュニアNISAの後継として課税口座を使うことになるが、手続き自体は同じようなものだ。妻にその話をしたら、「また面倒なこと始めるの?」と呆れ顔だった。
正直、その気持ちはよくわかる。役所に行って戸籍謄本を取り、証券会社に書類を提出し、親権者自身の口座と紐付けさせる。最短でも2〜3週間はかかる。この手間を考えると、途中で断念する人間が多いのも無理はない。5chの投資板でも「子どもの口座開設、書類多すぎて無理ゲー」みたいな書き込みをよく見かける。
だが、この手間を乗り越えることが、複利という強力なエンジンを始動させるための「最初のコスト」だと割り切るべきだ。無駄な書類仕事ではない。未来への投資だ。
月1万円が「340万円」になる試算
具体的に、月々1万円を年利5%で18年間運用した場合をシミュレーションしてみよう。元本は216万円。これが複利効果で約340万円にまで膨らむ可能性がある。
仮に学資保険で105%の返戻率だった場合、216万円が226.8万円にしかならない。その差、約113万円。この差は、子供が大学に進学する際の選択肢を広げたり、将来の夢を後押ししたりする、「自由の費用」と言い換えられる。
ファンド選びも重要だ。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のような低コストインデックスファンドは、信託報酬が年0.05775%以内と極めて低い。このわずか0.1%にも満たない手数料の差が、数十年という長期運用においては、数百万円単位の差を生み出すこともある。目先の利益だけでなく、「見えないコスト」を徹底的に排除するのが、プロとしての基本だ。
余談だが、先日、会社で使っているコピー機のリース契約を見直したら、月々の費用が数千円安くなった。こういう地味なコスト削減も、積み重なれば大きな差になる。投資も同じで、一見小さな手数料が、長期で見るとボディーブローのように効いてくる。
市場の変動と親の胆力
もちろん、投資に「絶対」はない。株価が下落する局面も必ず来る。その時、子供の将来資金が減るのを見て、心理的なプレッシャーに耐えられるか。これが多くの親が抱える最大の不安だろう。
だが、そこで狼狽して売却してしまっては、これまでの努力が水の泡になる。市場は常に変動するものだ。重要なのは、「長期・積立・分散」という基本原則を信じ、市場に居続けること。暴落は、むしろ「安く買い増せるチャンス」と捉えるくらいの胆力が求められる。
子供たちへの金融教育も、いずれ必要になるだろう。いきなり難しい話をするのではなく、まずは家計の会話に投資の話を自然に組み込むことから始めるつもりだ。「このお金は、将来お前たちがやりたいことのために働いているんだぞ」と、銭を働かせる意味を伝えていきたい。
「子供の口座は保守的に定期預金で運用すべき」という通説は、インフレによる貨幣価値の目減りを考慮すれば、実質的に資産を減らしているリスクがある。親としての「情」も大切だが、金融資産としては冷徹なROI分析が求められる場面だ。
結局のところ、子供の将来のための資産形成は、親がどれだけ合理的に、そして冷静に判断できるかにかかっている。投資判断は自己責任。だが、行動を起こさなければ何も始まらない。あなたなら、子供たちの未来にどんな銭を働かせますか。