朝のオフィスで、淹れたてのコーヒーを一口含んだ。窓の外はまだ薄暗いが、もうすぐ日が昇る。最近、頭の中は次世代への資産承継のことでいっぱいだ。子供たちに何をどう残すべきか、法人と個人、それぞれの資産をどう最適化していくか、考えることは山積している。

そんな折、ある資産家の承継相談の事例を耳にした。まさに「銭を動かす」という私の信念を体現しているような話で、非常に興味深く読んだ。

承継の盲点、通説の罠

多くの人間が「承継=相続税対策」と短絡的に考えがちだ。だが、この事例が示唆するのは、承継後の家族の生活資金計画と事業継続のためのキャッシュフロー確保こそが、短期的な税金圧縮よりもはるかに重要だという点だ。

先日、妻の恵子と、週末の夕食中にこの話になった。「相続税、どれくらいかかるのかしらね」と恵子が不安そうに言う。「もちろん税金も大事だが、それ以上に、承継後に残された家族が困らないように、そして事業が滞りなく続くように、しっかりと銭を働かせ続ける仕組みが肝心だと伝えた。目先の税金ばかりを気にして、肝心の資産が寝てしまっては元も子もない。

ポートフォリオ再編の具体策

事例の佐藤氏は、野村証券の「次世代アセットプランニング」を活用し、不動産比率が55%と高かったポートフォリオを大胆に見直したそうだ。これは、まさに我が社も抱える課題と重なる部分がある。

不動産が悪いわけではないが、流動性の低さは否めない。佐藤氏は、この不動産比率を調整し、代わりに海外債券15%(米国高格付け債)とプライベートエクイティ5%(アストリア・キャピタル社のファンド)を組み入れている。これにより、年間利回り目標を従来の2.5%から4.0%へ引き上げたと聞く。

まるで、これまで国内市場でしか勝負してこなかったベテラン経営者が、一念発起して海外の成長市場に目を向け、新たな事業の柱を築こうとするようなものだ。リスクは伴うが、リターンへの期待値は高まる。

マニアックな投資先の真意

なぜ、海外債券やプライベートエクイティなのか。これは単なる目新しさではない。海外債券は、分散投資と安定的な利回り確保が目的だろう。特に米国高格付け債は、為替リスクはあるものの、相対的に信用力が高く、ポートフォリオの安定化に寄与する。

そして、プライベートエクイティ。これは一般的な個人投資家には馴染みが薄いかもしれないが、未公開企業への投資を通じて高いリターンを狙うものだ。アストリア・キャピタル社のような専門ファンドを通じて組み入れることで、プロの目で選定された成長企業に間接的に投資できる。これは、まさに「銭を最大限に働かせる」ための、一歩踏み込んだ戦略と言える。

余談だが、先日息子の野球の試合を見に行ったんだが、あいつも最近は少しバットの振り方が変わってきたな。ああいう変化を捉えるのも、投資と似たところがあるかもしれない。

相続税削減の巧妙なスキーム

ポートフォリオの再編だけでなく、承継後の相続税対策も抜かりない。佐藤氏は、生前贈与シミュレーションを5回実施し、年間110万円の非課税枠を最大限活用。さらに、特定の非上場株式の評価額を約20%圧縮するスキームを導入したという。これにより、贈与税負担を約500万円削減する見込みだそうだ。

中小企業経営者にとって、自社株の評価は悩みの種だ。評価額が高ければ相続税負担は重くなる。いかにして適正な評価を下げるか、これは合法的な範囲で知恵を絞るべき点だ。この事例は、単に資産を分散するだけでなく、税制を深く理解し、具体的なアクションプランに落とし込む重要性を教えてくれる。

次世代への冷徹な教訓

この事例から私が得た教訓は明確だ。資産承継は、単なる「遺産分け」ではない。それは、次世代に銭を働かせ続けるための「戦略的なバトンタッチ」である。何もしないことが最大のリスクであり、それは長期的な視点で見れば、確実に資産価値を目減りさせる。

私の直近の目標は、法人・個人を通じた資産の運用効率を見直し、配当収入を最大化するポートフォリオへの再編だ。そして、子供たちへの金融教育を始めること。彼らが将来、自分たちの銭をしっかりと働かせられるように、今から種を蒔いておく。

承継は、まさに人生最後の「大勝負」と言える。冷徹な分析と、未来を見据えた戦略的な投資判断が、次の世代の盤石な基盤を築くのだ。私も、この道筋が見えたことで、改めて身が引き締まる思いだ。