OBSERVATION
2026-07-09

知人税理士に承継対策をぶつけてみた。経営者のリアルな回答
今日、顧問税理士の鈴木先生の事務所で事業承継の相談をしてきた。相変わらず、先生は「北村さん、まだ先でいいですよ」と穏やかに言う。この「まだ先でいい」という言葉、多くの経営者が安堵するのかもしれないが、俺にはどうも違和感がある。

先生の言葉の裏には、具体的な対策を先延ばしにすることで、結果的に税負担が増大する可能性が潜んでいるように思えてならない。これは、まさに相場での「まだ上がるだろう」という慢心が大損に繋がる心理と似ている。

「まだ先でいい」はコスト

事業承継は、経営者にとって最大のイベントの一つだ。しかし、多くの税理士は、日々の税務処理がメインで、長期的な承継戦略まで踏み込むケースは少ないと聞く。鈴木先生も、悪気はないのだろう。ただ、その「まだ先でいい」の間に、事業の利益が積み上がり、株価は容赦なく上昇していく。

以前、知人の製造業オーナーが、自社の株価を試算してもらった話を聞いた。年商3億円規模の会社で、類似業種比準価額方式での株価算定の結果、1株あたり3,500円と出たらしい。後継者への贈与だけで、約4,200万円の贈与税が発生する計算だと言う。この数字を聞いて、俺は背筋が凍った。先延ばしが招くコストは、想像以上に大きい。

節税貧乏の罠

「節税のために不動産を買え」というアドバイスもよく聞く話だ。確かに、相続税評価額は下がる。しかし、これは諸刃の剣だと俺は考えている。不動産は流動性が低い。いざ納税資金が必要になった時に、すぐに現金化できる保証はない。

これはまるで、手持ちの現金を金庫にしまったまま、鍵をどこかに失くしてしまうようなものだ。金庫の中に現金があることは分かっていても、いざという時に使えない。結果として、納税資金不足で会社を売却せざるを得なくなる「節税貧乏」のリスクが極めて高い。ROI(投資収益率)の視点で見ても、不動産投資が既存事業への再投資に勝ることは稀だろう。

純資産圧縮の具体策

では、どうすればいいのか。俺が今考えているのは、純資産を圧縮し、自社株評価を下げるための具体的なステップだ。一つは、役員退職金規程の見直し。役員退職金を積み増すことで、企業の純資産価額を計算上、圧縮できる可能性がある。

あるケースでは、役員退職金を5,000万円積み増すことで、後継者への株式承継にかかる税負担を約15%軽減できたと聞く。また、従業員持株会への譲渡スキームも有効だろう。これにより、分散していた株式を整理し、経営権の集中と相続税評価額の引き下げを同時に達成する事例もある。対策後3年で株価を40%抑制したケースもあるらしい。生命保険の活用も、キャッシュアウトを抑えつつ、退職所得控除を最大活用する手段として検討の余地がある。

そういえば、先日子供と近所の公園でキャッチボールをした。上の子が、将来何になりたいかと聞いたら、「父さんみたいに社長になりたい」と言ってくれた。その言葉を聞いた時、俺は改めて、この承継問題に真剣に向き合わなければならないと強く感じた。

最も高いROIは自社投資

結局のところ、最も高いROIを生むのは、自社への再投資だと確信している。M&A仲介会社(例えば、日本M&Aセンター)の無料査定を利用してみると、自社株の評価を下げるための不動産投資よりも、既存事業の収益力を高めるためのIT投資の方が、結果として相続時の純資産価額を抑えられる可能性が高いと推測できる。

IT投資による業務効率化や新規事業展開は、収益力を強化し、結果的に企業価値を向上させる。これが巡り巡って、将来的な相続税負担を抑えるメカニズムだ。納税というコストを、事業継続のための投資へと昇華させる。数字で判断し、未来を見据えた経営承継こそが、俺たち経営者が取るべき道だろう。

妻には、この話をまだ詳しくしていないが、まずは具体的なプランニングをノートに書き出して、子供たちの将来に向けた道筋を明確にするところから始める。銭は働かせるものだ。眠らせていては、ただの重荷になる。