承継、税逃れか投資か

承継、税逃れか投資か

今朝、ふとSNSで流れてきた「相続と節税」に関する議論を見ていて、何とも言えない気持ちになった。多くの人が「税逃れ」という言葉で経営者の資産防衛を断罪しているが、現場で帳簿と向き合っている身からすると、事はそう単純ではない。

北新地の雨、凍りついた帳簿

昨晩は北新地で、長年お付き合いのある佐藤さんの書斎にお邪魔していた。窓の外には冷たい雨が降り続いていたが、部屋の中の空気はそれ以上に凍りついていた。

机の上には、整理しきれないほど複雑な資産表が広がっている。先代から引き継いだ膨大な不動産と、細分化された持株会社。それらを眺めながら、私は嫌な予感を覚えた。数字の並びそのものに違和感がある。ここには、純粋な経済合理性だけでは説明のつかない「溜め込み」の気配が漂っているからだ。

数字が語らん、親父の背中

佐藤さんが抱える膨大な資産は、世間から見れば行き過ぎたタックスプランニングの産物かもしれない。しかし、その帳簿を紐解くと、先代が何を守ろうとしていたのかが少しずつ見えてくる。

先代が本当に残したかったのは、単なる現金や不動産ではないはずだ。次世代育成への投資、あるいは事業を継続させるための防衛策。そうした「形のないもの」を数字に変換しようと腐心した痕跡が、そこかしこに刻まれている。過去の帳簿から透けて見えるのは、単なるケチ根性ではなく、家業の魂を繋ごうとした執念だったのかもしれない。

秤にかける、二代目の覚悟

余談だけど、最近近所のスーパーで買った少し高めのコーヒー豆が予想以上に美味しくて、毎朝の豆挽きが唯一の癒やしになっている。そんな些細な日常とは裏腹に、佐藤さんとの対話は重苦しいものだった。

「資産を減らしてまで、この先を続ける価値があるのか」。二代目である彼は、そんな出口のない問いに苦しんでいる。防衛に徹すれば流動性は枯渇するし、投資に回せば税務的なリスクが膨らむ。ガバナンスを設計する重みと、経営理念という見えない資産の継承。二者の板挟みの中で、彼は経営者としての覚悟を問われている。

明日の銭、誰のために

資産を守ることが「税逃れ」と後ろ指をさされる時代だ。だが、私たちが守っているのは、ただの「金」なのだろうか。

結局のところ、私有財産の最適化は、次世代へ何を残すかという哲学に直結している。私が今、ポートフォリオの再編を進めながら考えているのも、子供たちにバトンを渡す際、そこにどれだけの「思想」を乗せられるかだ。単に数字を増やすだけなら、それはただの空論に過ぎない。

明日からは、税務の適正化を前提としつつ、それを「次世代の事業基盤」へどう変換できるか、具体的なシミュレーションをもう一度書き出してみることにしよう。守るべきは銭の額面ではなく、銭を働かせるための「意思」そのものなのだから。

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