
日曜6時の啖呵
日曜の朝6時、既婚者パーティー仲間のみのさんから「参加のたびに万札が飛ぶだけ。疲れて金使っただけですわ」というLINEが来た。俺は待ってましたとばかりに答えた。
「ほんまにコスパの低い行為やから、やめるべきですよ。もう既婚者パーティーにはお金を払わないと決めています」
「性欲はプロに解消してもらうのが今の結論です」「ホットヨガとかピラティスの方が健全に出会えるかもしれませんよ」とまで言った。すっかり達観したアドバイザーのツラをしていた。
その日の夜23時
同じ日の夜23時、俺がみのさんに送ったLINEはこれである。
「こんばんは、今日は昼からいたたまれなくなり、キコンパ新宿行ってきました」
朝に「やめるべき」と説教した、そのわずか17時間後だ。横浜のワンルームで昼下がりに猛烈に寂しくなり、気づけば新宿行きの電車に乗っていた。言い訳は「max50人とか言うから、本当か嘘か確認するために行ってしまいました」。誰も確認なんて頼んでいない。
現場で会った常連
会場は確かに人が多かった。そして以前の別パーティーで見かけた女性が2人いた。向こうも「あ、どこかで会いましたよね?」という反応。毎週のように通っている者同士、顔は覚えていても名前も会話の中身も一致しない。
結局その場で2人とLINEを交換した。1人は通訳の仕事をしている女性で、開口一番「うちはセックスレスなんです」と明かしてきた。彼氏が欲しいと言うが、体目当てで言えば1回で終わるタイプだと感じた。もう1人は常連風の女性で、二次会には参加せず速攻で帰路についた。
みのさんからは「セックスしたら好きになることもありますよね。ガンガン行ったらいいと思いますわ」と返ってきたが、心の中は虚しさでいっぱいだった。
なぜ足が向くのか
朝に「やめる」と決意し、夜には「行ってきた」と報告する。この意思決定と行動の不一致を、みのさんが的確に言い当てた。
「競馬と宝くじ、パチンコと同じ感覚ですね」
まさにそれだ。前回の振り返りで「25万円使って成果ゼロ」と身に染みているのに、「今回は奇跡の出会いがあるかも」「50人集まれば1人くらいは」という根拠のない期待に脳がハックされる。
単身赴任のワンルームで過ごす日曜の昼間は特に危険だ。静まり返った部屋で株価のチャートを眺めていると、ふと「俺は何のためにこの仕組みを作っているのか」という虚無感が襲ってくる。理性が焼き切れて、新宿行きの切符を買わせる。結果また1万円札が消え、大して惹かれもしない相手と「レスの悩み」を語り合って疲れて帰ってくる。
けじめの再設計
みのさんには「カメリアパーティーは管理人が良心的やから物は試しで」と勧めておきながら、自分は最大手で消耗戦の極みみたいな「キコンパ新宿」に飛び込んでいる。言行不一致も甚だしい。
今回分かったのは、必要なのは「行かないと決めること」ではなく、いたたまれなくなった時の代わりの行動を用意しておくことだ。
日曜の昼に寂しくなったら、みなとみらいへランニングに行く。整体の回数券を消化する。語学のAI音声会話を15分やる。「やめる」という禁止命令はギャンブル的な衝動には効かない。エネルギーを別の行動へ逃がす仕組みが要る。
56歳、単身赴任の夏。おっさんの戦場は既婚者サークルではなく、自分の「寂しさの処理能力」そのものだった。みのさんにはカメリアの日程を合わせると伝えたが、俺の二の舞だけは避けてほしい。
朝の決意が夜には崩れる。これ、あなたなら自分の中でどう折り合いをつけますか?
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