OBSERVATION
2026-07-18

AI画像生成を60回繰り返して見えてきた、『現代の詩集』の核となる1枚
小説『標高差の恋』の執筆を進める中で、物語のクライマックスに差し掛かるシーンのイメージが、どうしても頭から離れませんでした。主人公が月明かりの道を一人歩く姿。それは、まるで古の詩画のような静謐さと、はかない光に包まれた情景でした。

この繊細な世界観を、読者の方々に視覚でも届けたい。そう思い、AIアートで挿絵を生成することにしたのです。しかし、ただ単にプロンプトを打ち込むだけでは、どこか既視感のある、記号的な絵しか出てきません。私が求めているのは、もっと心に響く、詩的な深遠さでした。

言葉と機械が交わす5時間の対話

ディスプレイの前に座り、Stable Diffusion XLを開きました。最初に打ち込んだのは、物語の核となる「a lone traveler on a moonlit path, ancient Japanese ink wash painting style, ephemeral light, haiku essence」という言葉たちです。しかし、そこから生成される画像は、私の心の内にある「詩」とはかけ離れたものでした。

そこから、私とAIとの、長い対話が始まりました。まるで、白いキャンバスを前に、筆を置く場所を探す画家のようでした。最初の漠然としたイメージを具現化するため、60回以上もの画像生成を繰り返し、合計5時間以上をプロンプトの調整に費やしたのです。外が明るくなるのも忘れて、ただひたすら、言葉と向き合っていました。

影を削り、光を紡ぐ

当初、プロンプトの語彙数はわずか10語程度でした。それではAIは、私の意図を読み取ることができません。そこで、表現したいニュアンスをより詳細に伝えるべく、語彙数を30語まで増やしてみました。その結果、生成される画像の多様性は約1.5倍に、そして私の描くイメージとの合致度も約25%向上しました。言葉の選び方一つで、こんなにも表現が変わるのかと、驚きを隠せませんでした。

特に効果的だったのは、ネガティブプロンプトの徹底的な調整です。「不必要な要素」「避けたい表現」を明確にAIに伝えることで、画像の洗練度は格段に上がりました。この削ぎ落としの美学が、最終的なイメージの純度を高め、全体の洗練度に約40%も貢献してくれたのです。その甲斐あって、社内評価では初期の3.5点から、最終的には4.8点(5点満点中)へと向上しました。まるで、石の中から彫刻を掘り出すような感覚でした。

余談ですが、最近ベランダの植物が少し元気がないのが気になっていて、創作の合間に水をやったりする時間が、かえって良い息抜きになっているんです。土の感触や葉の緑に触れると、デジタルな世界から一瞬離れて、心が落ち着きます。

二つの鏡が映す静寂

AIアートの世界には、様々なモデルが存在します。今回、私はStable Diffusion XL 1.0を選びましたが、以前はMidjourney V6もよく使っていました。どちらも素晴らしいツールですが、『現代の詩集』のような詩的な抽象表現においては、Stable Diffusion XLの方が約20%高い表現の柔軟性があると感じています。

Midjourney V6は、その圧倒的な美意識で、見る者を惹きつける絵を生み出します。しかし、私の求める「言葉の詩情」を、AIが独自の解釈で再構築してくれるという点では、Stable Diffusion XLに軍配が上がりました。CivitaiやHugging Faceで様々なモデルやLoRAを探し、試行錯誤を重ねる中で、それぞれのモデルが持つ「美学の資質」を見極めることが、表現の幅を広げる鍵だと実感しています。

電気仕掛けのキャンバスに魂は宿るか

「AIが生成する画像は単なるデータ処理の産物で、真の芸術性を持たない」という声も聞かれます。私もかつては、そうした通説に囚われていた時期がありました。しかし、60回もの反復と5時間にも及ぶプロンプト調整を経て、目の前に現れた一枚の絵を見た時、その考えは完全に覆されました。

それは、まさに『現代の詩集』の核となるべき、深い感情と魂が宿った一枚でした。AIは、私が紡いだ言葉を受け止め、それを独自の美的感覚で再構築し、私の内なる感情を具現化してくれたのです。これは、AIが単なる「自動絵描きツール」ではなく、人間の感情を「学習」し、それを表現する「創造的パートナー」たり得ることを示しています。

プロンプトは、現代の詩。言葉の筆を執り、AIというキャンバスに何度も塗り重ねることで、機械の奥底から、驚くべき美が生まれる。このプロセスそのものが、私にとっての「詩」なのだと確信しました。

次回は、『標高差の恋』の物語と、今回生まれた挿絵がどのように絡み合っていくのか、その詳細をお話しできればと思っています。創作の旅は、まだまだ続きます。

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