
鏡の前で立ち尽くした絶望の夜
丹沢のバカ尾根を15年登り続けてきたおっちゃんやけど、実は若い頃にかじっていたサルサのステップを、3年ぶりに踏んでみることにしたんやわ。
でも、久しぶりに立ったスタジオの鏡の前で、自分の姿を見て愕然としたね。
音楽の裏拍(オン2)のタイミングで足が完全にもつれ、リズムに全く体がついていかない。
肩と腰を逆方向に動かすアイソレーションをやろうとしても、上半身と下半身がバラバラに硬直してまるで木偶の坊のようやった。
重心がずっと左足の親指側に残り続け、ターンのたびにバランスを崩して転びそうになる。
周りの視線が痛くて、その場から逃げ出したいほどの絶望感に襲われ、レッスンを途中で抜け出したくなったんやで。
無音の部屋で向き合う骨盤の土台
「まずはとにかく曲をたくさん聴き込んでリズム感を戻せ」と世間ではよく言われるけど、3年もブランクが空いた今の体にはそれが完全に逆効果やった。
音楽が耳に入るとどうしても表拍ばかりに意識が引っ張られて、肝心の身体の軸がぐらついてしまう。
そこで思い切って完全に無音の部屋で、自分の骨盤の傾きとじっくり向き合うことにしたんやわ。
オンライン講座のSalsaBoostを頼りに取り入れたのが、1日15分の「骨盤前傾・後傾ドリル」やった。
これが登山で急坂を登るときに上体を真っ直ぐ保つ体幹の使い方とそっくりで、ガチガチだった腰椎の可動域が少しずつ広がっていくのが自分でも分かった。
エルサルバ・ダンスアカデミーの調査データによると、3年以上のブランクがあるダンサーの85%が最初の1ヶ月で「重心のブレ」に挫折するらしい。
だからこそ、いきなり派手なステップを踏むのではなく、まずはこの骨盤という土台を静かに整えることが一番の近道やったんやね。
メトロノームが呼び覚ます足裏感覚
骨盤の可動域が戻ってきたら、次は足裏でリズムを捉えるトレーニングや。
スマホのメトロノームアプリ『BeatMaster Pro』を使って、まずはテンポ80BPMのゆったりしたリズムに合わせて自宅のフローリングの上を歩いてみた。
最初はメトロノームの音に足が噛み合わなかったけど、3日ごとに85BPM、90BPMと少しずつテンポを上げていき、最終的に120BPMまで正確に刻めるように調整したんやわ。
データによると、『BeatMaster Pro』を用いたテンポトレーニングを2週間継続すると、リズムのズレが約42%も減るという。
丹沢の下りで膝が笑わないように足裏全体で確実に地面をとらえるのと同じで、床をしっかりと踏みしめる感覚が蘇ってきた。
この地道な歩行トレーニングを毎日コツコツ続けたことで、錆びついた足裏のセンサーが確実に目を覚ましてくれたんやで。
ふたたびフロアの風を切るために
そうして地道な調整を重ね、迎えた14日間のプログラムの最後。再びあのスタジオのフロアに足を踏み入れた。
今回は音楽が鳴り響く中でも体が硬直せず、肩甲骨と股関節がスムーズに連動してラテンのうねりを自然に受け止められたんや。
自分のペースで地道に身体の軸を整えていくことの大切さは、長年山を登り続けてきたからこそ身にしみて分かっていたつもりやったけど、ダンスの世界でも全く同じやったね。
大きなブランクに直面して焦る必要なんてなかったんやわ。
明日からまた、焦らず一歩ずつ、自分の足裏の接地と骨盤の軸を確かめながら、静かに情熱の火を灯して歩んでいこうと思う。
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