台風7号と、あの宿の縁側
今朝、何となくRSSを流し見していたら台風7号の記事が目に止まった。6月27日まで交通が乱れ続けた、という話。

ああ、あの日か。先週のことだ。

空が変わる前の匂い

秋の山行のルート確認を兼ねて、吉野方面をうろうろしていた。本番の山行じゃなく、あくまで下見。道の状態を自分の目で確かめておきたかっただけだ。

朝は晴れていたんだけど、空気がどこかねっとりしていた。湿度が高い、というより、空気に圧がある感じ。台風前の独特の気配は、山に何度か入っていれば体でわかるようになる。

昼過ぎから空の色が変わり始めた。灰色というより、黄色がかった不自然な明るさ。雨の前の、あの光の色だ。

小さな駅の待合室

最寄りの小さな駅に滑り込んだのは午後2時ごろ。電光掲示板にはすでに「運転見合わせ」の文字。

待合室に5〜6人。地元のおじいさん、観光客らしい若いカップル、私みたいな一人の旅人。誰も喋らなかった。みんな黙ってスマホで状況を確認していた。

ホームの向こうに杉の山が見えて、稜線が風でざわざわしていた。その揺れ方が、もう普通じゃなかった。

縁側と、鮎の塩焼き

その日の列車は動かなかった。

近くの民宿に転がり込んだ。築50年は経ってそうな、廊下がきしむあの感じ。縁側に出ると、雨の匂いと木の匂いが混ざっていた。

夕方からは土砂降りだった。空から水が塊で落ちてくる、というくらいの雨量。庭の植木が風でひとかたまりになって揺れていた。そういう景色を、熱いお茶を持ちながら眺めていた。

おかみさんが「夕ご飯、食べますか」と声をかけてくれた。鮎の塩焼きと、柔らかく炊いた豆腐の味噌汁。台風の夜に食べるあの温かさは、しばらく忘れないと思う。

台風は情報だった

翌27日の朝、嘘みたいに晴れていた。

ただ道があちこち荒れていて、下見していたルートの一部は状態が読めなかった。そのまま突っ込む選択はしなかった。今回は偵察で終わり。

台風は邪魔者じゃなく、情報だと思うようにしている。 どういう地形がどう荒れるか、何日後に回復するか。体でわかってくると、山の計画の精度が上がる。今回もそういう意味では、悪くなかった。

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余談だけど、帰りの列車で隣のおじさんがずっと電話していた。阪神の話らしく、「なんでや!」という声だけが妙に耳に残っている。内容は全然聞いていない。

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皆さんは、旅の途中で予定が崩れたとき、どうしていますか?じたばたするより、その場にいる時間をそのまま楽しんだほうが、案外いい旅になることが多い気がしている。台風の夜の鮎は、計画にはなかった一品だった。

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