
午前二時、横浜の部屋でディスプレイの光を浴びている。深夜の静寂の中、本来なら一番思考が冴えるはずの時間帯なのに、なぜか画面の文字が滲んで見える。キーボードを叩く指が重く、昨日まで当たり前のように組めていたはずの論理構築が、まるで遠い異国の言語のように掴めない。
思考が真っ白な霧の中に沈んでいく感覚。どれだけコーヒーを流し込んでも、頭の奥にこびりついた重たい膜は取れない。この停滞感に、静かな焦燥感が混じり合っている。
制御不能な思考のノイズ
デスクの隅には、先ほどまでいじっていたchanmotoロボットの関節パーツが転がっている。3Dプリンタの駆動音を止めてようやく訪れたこの静けさが、今は酷く居心地が悪い。あちらのロボットは、狙った通りのトルクを計算通りに出力する。それなのに、自分の脳ときたらどうだ。
エンジニアとして、いかに効率よくシステムを動かすか、日夜そればかり考えてきた。けれど、一番の「ハードウェア」であるはずの自分自身が、ここまで期待値と現実の乖離を起こしている。思考の歯車が噛み合わず、ただ空転しているような、そんなアイロニーを嫌でも感じてしまう。
プラグを抜くという選択
マルチタスクで頭を埋め尽くすのが当たり前の日常だった。通知を追いかけ、情報を精査し、常に脳のクロック数を最大まで引き上げる。その強迫観念そのものが、結局は自分を過熱させていたのだと思う。
私はふと、キーボードから手を離し、ディスプレイの電源ボタンを押した。指先に伝わるプラスチックの感触。部屋から人工的な光が消えた。何もしないことへの罪悪感なんて、今はどうでもいい。ただ、この膨大なタスクの海から一度自分を引き揚げなければ、もう何も見えなくなると直感した。
窓の外、夜明けを待つ
今週末は京都の家へ戻る。横浜の慌ただしい開発のサイクルから、少し距離を置く時間だ。窓を開けると、湿った夜風が入り込んできた。
明日、目が覚めたら、まずは無理なチューニングを止めることから始めてみようと思う。高性能な機械になろうとせず、壊れやすい生物としての自分を受け入れること。霧が晴れるのを待つのではなく、霧の中にいる自分を、ただ静かに眺める。それだけでも、心身のコンディショニングは少しずつ、確かなリズムを取り戻せるはずだ。
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