最近、窓の外をぼんやり眺める時間が長くなりました。東京の空は今日もどこかグレーがかっていて、ビルの隙間から見える小さな青が、かろうじて「空」だと教えてくれます。会社での仕事と、夜や週末の副業。フリーランスへの移行を目標にしているからこそ、今は踏ん張り時だと自分に言い聞かせているけれど、正直、体が悲鳴を上げているのを感じます。

先日、副業の打ち合わせで会った友人のミカが、「アリス、顔色悪いよ。たまには休んだら?」と心配してくれました。その言葉に、ふと自分の現状を突きつけられた気がして。もう35歳。若くないから無理が効かないのは分かっているのに、焦りばかりが募ります。

「贅沢は敵」?35歳の私が、高級スパに踏み出せない理由。

そんな疲労困憊の毎日の中、ふと手にした雑誌で高級ホテルのスパ特集が目に留まりました。きらびやかな写真と、「日常からのエスケープ」という言葉。漠然とした憧れはあったものの、すぐに頭をよぎるのは「贅沢は敵」という、どこか染み付いた思考です。

副業で少しずつ収入を増やしている今だからこそ、お金の使い方には慎重になります。正直なところ、「この金額に見合う価値があるのか?」と、どうしても費用対効果を考えてしまう。例えば、マンダリン オリエンタル 東京やザ・ペニンシュラ東京といった有名どころのスパのウェブサイトをいくつか見てみましたが、90分のトリートメントで3万円を超えるのは当たり前。これは決して安くない出費です。

それに、東京にはスパが多すぎて、どこを選べばいいのか分からないのも本音です。情報が多すぎて、かえって選ぶのが億劫になってしまう。それに、忙しくて予約の電話をする時間もなかなか取れないし、一人で初めて行くのは少し敷居が高いような気がして、結局いつも「また今度」と後回しにしていました。

(余談ですが、最近SNSで「承認欲求は生存本能だ」と発信したら、意外と共感の声が多くて驚きました。でも、誰かに認められることと、こうして自分自身を満たすことって、似ているようで全く違う感覚なんですよね。)

「もう、いいじゃない」。私だけの東京エスケープ、決行の朝。

でも、ミカの言葉がずっと心に残っていました。「自分の体が資本なんだから、たまにはメンテナンスも必要だよ。ロボット開発だって、メンテナンスなしじゃ動かないでしょ?」その一言が、私の頑なな心を少しだけ溶かしたんです。

ある日の夜、ベランダで植物に水をやりながら、ふと「もう、いいじゃないか!」と開き直るような気持ちになりました。デジタルデトックスで静寂を得ることも、物理的なロボット開発で承認欲求を満たすことも、結局は自分を研ぎ澄ますための手段。このスパ体験も、きっとその一つになるはずだと。

そこから、私は一気に動きました。平日の午後なら比較的空いているという情報を信じて、スマホでいくつかのスパを比較。最終的に、前から気になっていた「ザ・ペニンシュラ東京」のスパに決めました。平日の15時から、90分のボディトリートメント。ウェブサイトからポチッと予約ボタンを押す指は、少し震えていたけれど、その後の解放感といったら。

予約を入れた日の朝は、いつもと違う高揚感がありました。普段は副業の資料を広げるテーブルの上も、今日はすっきり片付いています。まるで、新しい自分に出会う前の準備をしているみたいでした。

温かいオイルが、長年の凝りを溶かす。私を解き放つ、東京の隠れ家。

ザ・ペニンシュラ東京のスパは、まさに都会の隠れ家でした。まず驚いたのは、施術前の丁寧なカウンセリング。セラピストさんが私の今日の体調や気分をじっくり聞いてくれて、それに合わせてアロマオイルを選んでくれるんです。普段はデジタルな情報ばかり扱っているから、こうして五感に訴えかける体験は、それだけで新鮮でした。

施術が始まると、温かいアロマオイルがゆっくりと体に馴染んでいくのが分かります。ラベンダーとゼラニウムがブレンドされた香りが心地よく、施術中の優しい圧が、肩や背中に溜まっていた長年の凝りをじんわりと溶かしていくようでした。頭の中を占めていた仕事や副業、フリーランス移行への不安といった日々の心配事が、一つ、また一つと遠のいていく感覚。まるで、水面に落ちた波紋が次第に消えていくように、思考がクリアになっていくのを感じました。

施術中は、まさに瞑想のような時間でした。ストレスホルモンが減り、幸福感が増していくという話は知っていましたが、本当に体が軽くなり、心がふっと浮き上がるようでした。普段は集中力を高めるためにデジタルデトックスを意識していますが、こうして物理的なアプローチで深いリラックスを得ることも、また別の意味での「静寂と集中力」を研ぎ澄ます方法なのだと気づきました。

施術後、リラクゼーションラウンジでハーブティーを飲みながら、東京の景色を眺めました。窓の外には、いつもと変わらない喧騒が広がっているのに、私の心の中は驚くほど穏やかで、クリアになっていました。たった数時間で、こんなにも心身が解放されるなんて。これは単なる贅沢ではなく、私にとっての「心のメンテナンス」であり、未来の自分への大切な「投資」なのだと、この時確信しました。

スパを出て、私はまた、私になる。少しだけ、優しい私に。

スパを出た後の足取りは、驚くほど軽やかでした。まるで体の中から余計なものがすべて排出されたみたい。顔も、少しだけ晴れやかになった気がします。

「贅沢は敵」だと思っていたけれど、これは違いました。これは、デジタル社会というサバイバル環境を生き抜くために、自分という『武器』を研ぎ澄ますための不可欠な儀式なのだと。副業で得た収入を、こうして自分の心身に投資すること。それが、結果として仕事の生産性を高め、新しいアイデアを生み出すことに繋がるのだと実感できました。

来月のご褒美計画は、もう決めています。次回は、もう少し短時間のクイックトリートメントでも、瞑想効果と同じくらいの深いリフレッシュが得られるという話を聞いたので、そちらも試してみたいと思っています。忙しい毎日の中でも、賢く自分を労わる時間を見つける。それが、今の私にとって一番大切なことなのかもしれません。

あなたなら、どんな自分への投資を選びますか?