
指先で崩れる、硬質な夜の夢
寝室の冷たさとは違う、白く無機質な樹脂の欠片。夫が仕事部屋の隅に残していった、何かの模型でした。
冷蔵庫の低く響く唸り声だけが、今の私の世界を満たしています。
夫のいない冷え切った寝室で、私はただ、粉になった欠片を眺めることしかできませんでした。
画面の光が暴く私の輪郭
そんな虚しさを誤魔化すように、私は裏垢にログインします。
画面から漏れる青白い光が、私の顔を照らして少しだけ熱い。誰からも求められていない「理想の私」を演じるために、指先を動かします。
「いいね」という数字は、まるで乾いた砂のよう。
誰かの熱量を借りてしか息ができない自分が、心底嫌になる瞬間があります。あーあ、また寂しくて、誰かの視線を求めてこんなことしちゃったな。そんな自分への自己嫌悪で、胸の奥がキュッて痛くなるんです。
脆い私を守るための隠れ家
でもね、そんな夜があってもいいと思うんです。
誰にも言えない秘密や、裏垢でしか吐き出せない感情は、私たちが自分を守るための、不器用だけど大切な防具なのかもしれません。
ヤリモクの怪しいDMが届いても、今はただ、そっと閉じるだけ。
「自分を大切にできない夜があってもいい。でも心だけは守ろうね」
夜の街を歩く先輩のような気分で、私は自分にそう言い聞かせています。他人の評価なんて、今の私には必要ないのだから。
壊れたままの自分を愛する
指の間に残った粉状の樹脂を、私はゴミ箱に捨てるのではなく、掌に包み込みました。
硬くて完璧に見えたものだって、いつかはこうして崩れていく。私たちの関係や、積み上げてきた自己評価も、どこかで脆化しているのかもしれませんね。
窓の外が、少しずつ青白く白んでいく様子を眺めます。
壊れたものを隠すのではなく、そのまま掌の中で受け入れる。そんな覚悟を決めると、少しだけ呼吸が楽になる気がするんです。
さて、そろそろ夜明けですね。明日の朝、私はどんな顔をして起きたらいいのかな。そんなことを考えながら、今日も静かに自分を抱きしめています。
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