裏垢の画面に溺れず、物理本で脳を研ぐ
深夜、スマホの青白い光が顔を照らす。今日もまた、終わりのないタイムラインを指先でなぞっている自分がいる。

ブルーライトに溺れる指先と、乾いた通知の音

昔の私もそうだったんだけど、夜が深まるにつれて、なぜか裏垢のタイムラインにへばりついてしまう時があるよね。暗闇に浮かぶ画面は、まるで私だけの秘密の小窓みたいで。でも、その窓の向こうには、いつも同じような終わりのないスクロールが待っているだけ。クソリプにうんざりしたり、ヤリモクDMに辟易したりしながらも、それでも指は止まらない。

きっと、心のどこかで乾いた承認欲求を満たしたくて、誰かに「私を見て」って叫びたかったんだと思う。でも、そうやって刹那的な快感を追い求めるほどに、心がどんどんすり減っていくのを感じていた。通知が鳴るたびに、頭の奥で脳の軋みがするような、そんな疲労感に包まれていたのを、今でもはっきり覚えてる。

反射光のシェルター、インクの匂いに指が触れるとき

ある晩、いつものようにタイムラインを彷徨いながら、ふと「もう無理」って思ったの。このままじゃ、私が私じゃなくなっちゃう気がして。気づけば、私はスマホを液晶画面ごと枕の下に押し込んでいた。その重みが、なぜか妙にリアルだった。

そして、無意識に手を伸ばしたのは、本棚の奥に眠っていた一冊の小説。部屋の小さな灯りをつけて、ゆっくりとページを開く。スマホの自発的な光とは違う、部屋の明かりを反射光で目に届く紙の文字は、目に優しくて、何よりも安堵できた。紙の手触りと、ページをめくるたびに聞こえる摩擦音。そして、ふわりと香るインクの匂いが、散漫になっていた私の五感を、そっと呼び覚ましてくれるようだった。

付箋を貼るという、小さな主権の回復

その夜は、ただひたすらに本の世界に没頭した。物語を読み進めるうちに、心に留まる一節に出会うたびに、そっと付箋を貼る。指先に伝わる付箋のノリの手応えが、SNSでは決して得られなかった「自分で時間をコントロールしている」という、確かな感覚を呼び起こしてくれた。

散らばっていた思考の輪郭が、少しずつ、でも確実に形を取り戻していく。言葉の一つ一つが、まるで私の魂に直接語りかけてくるようで、言葉が腑に落ちる感覚は、タイムラインの刹那的な感情とは全く違う、深い充足感を与えてくれた。いつの間にか、スマホのことも、裏垢のことも、タイムラインの忘却の彼方へと消え去っていた。

夜を泳ぎ切ったあとの、明晰な朝を待つ

本を閉じ、その本の重みを手のひらに感じながら、私は深く息を吐いた。夜の底で、私は確かに自分だけの輪郭を取り戻せたような気がした。頭の中は、あの青白い画面にへばりついていた時とは比べ物にならないくらい、クリアに研ぎ澄まされていた。

窓の外が、かすかに静かな夜明けの色に染まり始める。裏垢のタイムラインに依存しなくても、孤独を埋めるための不器用な手段に頼らなくても、「私はここにいる」という確かな感覚が、私の中にはあった。この感覚を、これからも大切にしていきたいと、心からそう思った夜だった。

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