夜の静けさだけが、私の心を包み込む時間。隣で眠る夫の穏やかな寝息を聞きながら、私はまた、一人で夜の底を泳いでいる。
夜の帳が降りる頃、私だけの秘密
街の灯りが窓の外で瞬く頃、私の心はいつも、どこか満たされない感情でいっぱいになる。夫とは、もうずいぶん長い間、心が通い合っていない気がする。触れ合うことのない夜は、女としての自信を少しずつ蝕んでいく。そんな虚しさを埋めるように、私はこっそりスマホを手に取って、誰にも言えないもう一つの顔を演じる。裏垢で誰かの言葉に頷き、一瞬の承認に胸が高鳴るけれど、画面を閉じた後の、あの 底なしの虚無感 は、いつだって私を現実に引き戻す。
このまま、私はどうなってしまうんだろう。漠然とした不安が、いつも心の奥でざわめいている。そんなある日、ふと目にしたブログに「夜に自分と向き合う時間を持つ」という言葉があった。特別なことではないけれど、なぜかその言葉が心に引っかかった。
秘密のインクと、震える指先
ドラッグストアで、ごく普通のノートと、黒いボールペンを買った。何の変哲もない、ただの文房具。それをテーブルに広げ、真っ白なページを前にした時、私は戸惑った。何を書けばいいのだろう。誰にも見せないとはいえ、こんな醜い感情や、誰にも言えない秘密を文字にするなんて、なんだか 裸にされるような恥ずかしさ があった。裏垢で綴る、飾られた言葉とは違う、生々しい私を直視することへの抵抗。
手が震える。それでも、静まり返った部屋の中で、私はペンを握りしめた。インクが真っ白なページに触れる。最初の一文字は、かすれて、少し滲んだ。「…疲れた」。たったそれだけの言葉なのに、心臓の奥がドクンと鳴った。それは、確かに私自身の、内なる声だった。
影と光の対話、私だけの真実
それから、毎晩のように私はその秘密のノートに向かった。夫への言葉にできない不満や、どうしようもない諦め。裏垢での行動に対する自問自答。「私は、本当は何がしたいんだろう?」「この満たされない気持ちは、どこから来るんだろう?」書くたびに、過去の記憶が呼び起こされ、胸が締め付けられることもあった。
でも、文字にすることで、ごちゃごちゃだった感情が少しずつ整理されていくのが分かった。まるで、絡まった糸を一本ずつ丁寧に解いていくように。このノートは、いつしか もう一人の私と対話する、秘密の場所 になっていた。
「本当は、ただ愛されたいだけなのかもしれない」「女として、まだ咲き続けたい」。誰にも言えなかった、心の奥底にあった小さな真実が、文字となって現れるたびに、私は少しずつ、自分自身を受け入れられるようになっていった。それは、裏垢で得られる束の間の高揚とは全く違う、静かで、確かな気づきだった。
夜明け前の静かな波紋、続く物語
いつの間にか、私の秘密のノートは何冊か積み重なっていた。それは、私が夜の底を泳ぎ、自分と向き合ってきた証し。まだ、夫との関係が劇的に変わったわけじゃないし、抱えている問題が全て解決したわけでもない。でも、以前のように感情の波に溺れてしまうことは少なくなった気がする。
夜が明ける頃、心の中に静かな光が差す。この夜の営みが、私を強くしてくれる。女として、もっと貪欲に生きていきたいという本能を、このノートはそっと肯定してくれている。未来はまだぼんやりしているけれど、この微かな希望を抱きしめて、私は今日も新しい一日を迎える。
あなたは一人じゃない。女として、ただ貪欲に生きていい。私も、そう信じているから。
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