最近、とあるニュース記事を見かけて、少しだけ引っかかったことがありました。有明で「文具女子博トーキョー2026」というイベントが開催されているという内容です。

普段、私が向き合うのは、もっと無機質で、冷たい光を放つディスプレイの向こう側にある未来の技術。そんな私が、なぜかそのニュースに心を惹かれ、週末、有明GYM-EXへ足を運んでいました。

有明の喧騒と手触りの誘い

2026年の有明は、いつも通り、未来を先取りするような、どこか無機質な空気が漂っています。普段、私が触れるのは、膨大なデータや論理の塊。効率化を追求し、いかに無駄をなくすか、という思考が常に頭の中にあります。

そんな私が、有明GYM-EXの会場に足を踏み入れた瞬間、予想外の熱気と、色とりどりの世界に包まれました。紙の匂い、インクの匂い、そして何より、たくさんの人のざわめき。それは、私の日常とはあまりにもかけ離れた、忘れかけていた手触りへの誘いのように感じられました。

『くじらぐも』と心のノイズ

会場を巡る中で、ふと目に留まったのが、教科書作品「くじらぐも」のクリアファイルでした。半世紀以上も親しまれてきたというそのデザインは、私自身の幼い頃の記憶を呼び覚ますような、不思議な懐かしさがありました。

クリアファイルを手に取った時、頭の中に「本棚のノイズ隠し」という言葉が浮かびました。物理的な本棚の雑然としたノイズを隠す文具がある、という話を聞いたことがあったからです。それは、単に物を整理するだけでなく、視覚的な情報過多からくる心のざわつきを、そっと包み込んでくれるような役割があるのかもしれない。デジタル社会で情報が溢れかえる今、私たちの心の中にも、無数の「ノイズ」が散乱しているような気がして、ふと立ち止まってしまいました。

剥がれる皮、思考の澱

さらに歩を進めると、「フルーツメッセージ」という、果物の皮をむくように開けるメッセージカードに出会いました。実際に手に取り、ゆっくりと切れ込みに沿って「皮」を剥がしていく。その行為は、ごくシンプルなものなのに、デジタルでは味わえない「手間」と「プロセス」の豊かさを感じさせました。

私たちは効率を求め、ワンクリックで全てが完結する世界に慣れすぎています。でも、この「皮をむく」という一手間は、メッセージを受け取る相手への思いやりであり、情報の本質にたどり着くまでの「熟成期間」のようにも思えました。私の思考の中にも、無意識のうちに溜まっていた「澱(おり)」のようなものがあるのかもしれない。もっと深く、本質を見極めるためには、時には手間を惜しまず、じっくりと向き合う時間が必要だと、このアナログな体験が教えてくれた気がします。

紙の匂いの先に灯る未来

会場を後にする頃には、私の心の中に、入る前とは違う穏やかな感覚が広がっていました。デジタル技術の進化は、私たちの生活を豊かにし、効率化を進める上で不可欠です。しかし、それと同時に、人間が持つ普遍的な感情や、五感で感じるアナログな価値が、どれほど大切であるかを再認識させられました。

紙の匂い、手触り、そして、誰かのために手間をかける温かさ。これらは、情報過多な現代社会で、私たちが心の平穏を保ち、本当に大切なものを見つけるための「羅針盤」になるのかもしれません。これからも、技術の未来を見据えながら、同時にこの「紙の匂い」が象徴する人間らしさも大切にしていきたい。そうすることで、私の「家族の歩みを支え、技術を未来へつなぐ」という今のテーマにも、きっと新しい光が差すはずだと、静かな期待感とともに確信しました。

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