まさか自分が山登りをするなんて、去年の今頃は夢にも思っていませんでした。友人に誘われて軽い気持ちで始めたのがきっかけですが、いざ行ってみると、山の空気の美味しさとか、頂上から見下ろす景色の壮大さに、すっかり魅了されてしまって。

でも、問題は山服ですわ。食い倒れの街で育った私にとって、美味しいものを食べるためなら財布の紐は緩んでも、正直、服にはそこまでこだわりがなかったんです。

まさかの山登り、まさかの出費。浪速の胃袋、山に挑む!?

初めて山登り用の専門店に足を踏み入れた時の衝撃は、今でも忘れられません。カラフルで機能的そうなジャケットやパンツがずらりと並んでいて、一つ一つ手に取ってみると、どれもこれも「なんぼすんねんこれ…」と声が出そうになるほどの値段。普段、食材の値段にはうるさい私が、まさかこんなにお金を使うとは自分でも驚きでした。

店員さんの説明を聞いても、防水透湿性とか撥水加工とか、聞いたことのない専門用語ばかりで、正直「なんのこっちゃ?」という感じ。でも、山で快適に過ごすためには、ちゃんとした「ギア」が必要なんやな、と少しずつ理解していきました。

結局、清水の舞台から飛び降りるつもりで、そこそこのお値段のジャケットとパンツを購入。その時は、次の山行が楽しみで仕方なかったのですが、ふと頭をよぎったのが「この服、どうやって洗うねん…」という素朴な疑問と、漠然とした不安でした。食いもんと同じで、扱い方を間違えたら台無しになるんちゃうか、と。

山の澄んだ空気と、普段の浪速の喧騒との違いを肌で感じながら、私は新しい世界に足を踏み入れたのでした。

汚れと汗と、謎の『エコ』。浪速のオッサン、洗濯の壁にぶち当たる

初めての山行を終え、家に帰ってきて山服を脱いだ時のこと。泥だらけで、汗の匂いが染み付いたジャケットとパンツを見て、「うわ、えらいことになってるやんけ…」と思わず声を上げました。山の土の香りと、自分の汗の匂いが混じり合って、なんとも言えない状態です。

いつもの癖で、洗濯機に放り込もうと手を伸ばした瞬間、ハッと我に返りました。「まてまて、こんなもん、普通の洗剤で、普通に洗濯機で洗ったらアカン気がする…」。せっかく高いお金を出して買った大切なギアです。これを台無しにしてしまったら、それこそ「もったいない」の極みやないか。

「えらいもん買ってしもうたな…」と少し後悔しつつも、この高価な服を傷つけたくないという切実な不安が募りました。どうすればいいのか途方に暮れて、友人に相談したり、ネットで調べたりするうちに、「専用洗剤」「撥水加工」「エコ洗い」といったキーワードが目に飛び込んできたのです。

特に「エコ洗い」という言葉には、最初はピンとこなかったですね。「エコってなんやねん? 美味しいんか?」と、浪速の人間としてはまず「得か損か」を考えてしまう。でも、「環境に優しい」ってことは、なんかええことなんかな、と少しだけ興味が湧いてきたんです。

浪速流『もったいない』精神、山服を救う。試行錯誤の洗濯道

「エコ洗い」という言葉に背中を押され、私は情報を集め始めました。専門店の店員さんに改めて話を聞いたり、インターネットで山服のケアに関する記事を読み漁ったり。防水透湿性素材には専用の洗剤が必要だとか、乾燥方法にもコツがあるとか、知らないことだらけでした。専門用語には相変わらず四苦八苦しましたが、大切なギアのためと必死に理解しようと努めました。

そして、専用洗剤の値段を見て、またもや「ひぇー、洗剤まで高いんか!」と衝撃を受けました。正直、最初は躊躇しましたが、これもギアを長持ちさせるための投資や、と自分に言い聞かせ、渋々購入。

いざ、実践です。初めての試みだったので、まずは手洗いから挑戦しました。ぬるま湯に専用洗剤を溶かし、優しくジャケットを揉み洗いします。水の冷たさ、洗剤のほのかな香りが、普段の洗濯とは全く違う感覚でした。「こんなに丁寧に服を洗うなんて、人生で初めてやな」と、なんだか新鮮な気持ちになったものです。

泥汚れがひどい部分は、柔らかいブラシでそっと部分洗い。まるで料理の下処理をするかのように、慎重に汚れを落としていきました。すすぎも、水を節約しつつ、洗剤が残らないように何度も丁寧に。これもまた、浪速の「もったいない精神」が活かされる場面やな、と。

乾燥は、風通しの良い日陰で自然乾燥。さらに、撥水加工を再活性化させるために、低温の乾燥機にかけるという工程も試しました。「ほんまにこれで撥水が効くんか?」と半信半疑でしたが、小さな失敗を重ねながらも、少しずつコツを掴んでいきました。

結局、ええもんを長持ちさせるのが一番の節約になる、ということに気づいたんです。安くて旨いもんを追求する浪速の知恵が、まさか山服のエコ洗いに通じるとは。ええもんを大事にするんは、美味いもんを大事に食うのと一緒やな。素材を活かすっちゅうことか、と妙に納得した瞬間でした。

洗った先に見た、浪速の空。山服と、私の新しい味

数日後、丁寧に洗い上げた山服が完全に乾いた時、私は思わず「なんやこれ、新品みたいやんけ!?」と声を上げました。撥水スプレーをかけた後、低温乾燥機で熱を加えた効果か、水を弾く様子もバッチリです。洗い上がりの見事な状態に、思わずニンマリしてしまいました。

手間ひまかけて手入れした分だけ、この山服への愛着がぐっと深まったのを感じます。「ちょっとだけ、ええことした気分やな」と、静かな満足感が胸に広がりました。高価なギアを長く使える喜びと、環境に配慮できたことへの静かな誇り。

食い倒れの街の人間が、まさかこんなに服の手入れにこだわるようになるとは。山に登り、エコ洗いを実践したこの経験が、私の価値観に新しい「味」を加えてくれたようです。美味いもんを大事に食うのと、ええ道具を大事にするんは、根っこは一緒なんかもしれへんな、と。素材を活かし、長く味わう。

この経験は、これからの私の生活にも、きっと何か新しい影響を与えてくれるでしょう。次に山へ行くのが、今から楽しみでなりません。そして、次は何を「美味しく」味わうことになるのか、私自身も期待しているところです。

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