OBSERVATION
2026-06-30

11兆円介入はなぜ「失敗」したのか? ─ 円安を止めるのは何か?
11兆円介入はなぜ「失敗」したのか? ─ 円安を止めるのは何か?

週末に自宅の書斎で机の引き出しを整理していたら、古いノートが出てきた。数年前に法人と個人の資産配分をどう組み替えるか、必死に殴り書きしたメモだ。あの頃からリスクの取り方は変わっていないが、足元の為替相場を見ていると、当時の前提がひっくり返るほどの狂気を感じる。今朝もRSSリーダーでトウシルの「11兆円介入はなぜ失敗したのか」という分析記事を目にし、改めて今の相場構造の歪さを突きつけられた気分になった。

巨額の弾薬が溶けた理由

11.7兆円という、国家予算レベルの巨額の弾薬を市場に投下したにもかかわらず、円安の基調はびくともしなかった。為替介入直後は一時的に5円近く急落する局面もあったが、結果としてその下落は海外の投機筋やEA(自動売買)の絶好の「押し目買いポイント」として回収されただけだった。

なぜこれほどの規模の資金が市場に一瞬で吸い込まれ、事実上の「失敗」に終わったのか。理由は明確だ。どれだけ大量の円買い・ドル売りを実行したところで、日米の圧倒的な金利差という構造的要因にメスを入れない限り、中期的なトレンドはピクリとも動かないからだ。実需の貿易赤字に加え、海外のレバレッジファンドによる円キャリートレードの執拗な波を、単発の資金投入で押し戻すことなど最初から不可能なのだ。

余談だが、最近上の子供が「投資って円安の時に何をすべきなの?」と聞いてきた。銭を眠らせずに働かせる感覚を教えるのは本当に難しい。学校の教科書的な綺麗事ではなく、こういう相場の生々しい力学をどう伝えるか、親としても経営者としても頭を悩ませている。

2024年の成功と今回の決定的な差

今回の介入が単なる一時的なショックで終わった背景には、過去の成功体験との決定的な違いがある。2024年に行われた為替介入の際は、一時的にトレンドが円高方向へと大きく巻き戻した。それは介入単体の効果ではなく、直後に日銀が政策金利を 0.25%へと利上げ する決定を下したからだ。

「介入という短期的なビンタと、利上げという構造変化がセットになって初めて、市場はポジションの解解消へと動く」

市場は常に次の金利動向を冷徹に見つめている。当時の相場では、5chの市況板でも「介入で焼かれた」と阿鼻叫喚の声を上げていたショート勢が、利上げの発表とともに一気に息を吹き返し、22円以上もの円高トレンドを形成する原動力となった。しかし、今回の局面では利上げが伴わなかった。金利差が変わらないと見透かされた瞬間、ヘッジファンドたちは「政府が防衛ラインを敷いてくれたおかげで、安心してドルを買える」と確信したのだ。

データと需給が示す冷徹な真実

テクニカル的な視点で見ても、ドル円の日足RSIや移動平均線乖離率は、介入によって一時的な過熱感を冷ますだけの「調整波」を形成したに過ぎない。中期的なトレンドラインである200日移動平均線を大きく割り込むような、構造的な大口の売りは観測されなかった。

海外のRedditなどの投資コミュニティを覗いてみても、日本の介入は「絶好のエントリーチャンス」として完全にカモにされていた。どれだけ財務省が「急激な変動には断固たる措置をとる」と口頭介入を繰り返したところで、日銀が動かない限り、アルゴリズムは淡々とドル買いのシグナルを出し続ける。金利のつかない通貨を売り、金利の高い通貨を持つというキャリートレードの基本原則は、感情を持たないプログラムにとって絶対的なルールだからだ。

これ全然関係ないのだが、会社の業務効率化のためにGitHub Actionsを使ったCI/CDパイプラインの自動化を自分で組み始めた。技術の進化に追いつくのは大変だが、仕組みを自動化して最適化するアプローチは、投資のEA戦略を構築するプロセスと非常によく似ていて面白い。

生き残るための教訓

完璧な答えや聖杯など、この相場には存在しない。国力をバックにした巨額の介入資金でさえ、市場の大きな潮流の前にはただの防波堤の一角に過ぎないという現実を、私たちは知る必要がある。

個人投資家が機関投資家や巨大な市場のうねりに立ち向かうためには、国家のポーズや綺麗事の報道を真に受けないことだ。チャートと金利差という冷徹な事実だけを愚直に追いかけ、機動力を持ってポジションをコントロールしていくしかない。次世代への資産承継やポートフォリオの再編を進める上でも、この「歪みと向き合う視点」だけは絶対に忘れないようにしようと、机の上の古いノートを閉じながら改めて自分に言い聞かせている。

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