
SNSのタイムラインを眺めていたら、語学学習の壁にぶつかって「もう辞めたい」と零している人の投稿が目に飛び込んできました。画面の向こう側の見ず知らずの人ですが、その焦燥感や自分に対する情けなさは、かつて私も嫌というほど味わった感情です。
淀川の風に紛れて、自分の声が響く夜
夜、自宅で古いガジェットや書類を整理していると、かつて語学を学ぼうとして挫折した跡がそこら中に残っています。特に録音に使っていた古い機材を見つけたときは、胸が締め付けられるような気恥ずかしさが蘇りました。
英語を話そうと口を開いても、出てくるのは自分でも笑ってしまうような拙い響きばかり。街の雑踏や、遠くで聞こえる列車の音に紛れさせて、誰にも聞かれないように小さな声で呟くのが精一杯でした。あの時の、自分の声に対する得体の知れない恥ずかしさは、今でも皮膚感覚として残っています。
録音機が映し出す、裸の自分
どうしても英語を使いこなしたいという執着があった私は、ある日思い切って自分の英語を録音して聴くという「儀式」を始めました。最初は自分の声のあまりの不甲斐なさに、再生ボタンを押す指が震えるほどでした。
しかし、何度か繰り返すうちに不思議な感覚に襲われました。下手だと思っていた自分の英語が、驚くほど一生懸命で、どこか愛おしく感じられる瞬間があったのです。ラジオから聞こえてくるニュースを真似て、拙い英語で独り言を呟く。その連続が、私という人間を少しずつ世界と接続してくれているような気がしました。
感情を乗せた言葉が、皮膚を突き抜けるとき
ただのフレーズの暗記は、私にはどうも合いませんでした。効率ばかりを求めても、言葉は血の通わない記号でしかない。ある夜、冷えたコーヒーを飲みながら、物語の主人公になったつもりで感情をたっぷり込めて発音してみました。
すると、言葉が頭の中の知識という枠を超えて、自分の体の一部として馴染んでいくような感覚を覚えたのです。窓の外の湿った夜の空気や、部屋に漂うコーヒーの香りと共に、英語が自分自身の表現として皮膚を突き抜けていきました。あの瞬間の解放感は、今でも忘れられません。
明日の自分と、また喋りたくなってきた
完璧なネイティブの真似をする必要なんて、最初からどこにもなかったのだと気づきました。自分の声を愛し、少しずつ対話の道具として育てていく。そう決めてから、不思議と英語を口にすることへの恐怖が薄れていきました。
明日もまた、朝一番で自分の声を録音してみようと思います。ナニワの語学道場主のような気分で、明日の自分に「まだまだこれからやぞ」と声をかけてやりたい。日常の中に、自分の言葉で世界と繋がるささやかな楽しみを見つけたような、そんな静かな高揚感に包まれています。
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