そんな折、整体やボイストレーニングに通い始めたことで、「発声の基本は姿勢にあり」という真理に気づかされました。骨盤を立て、体幹を意識することで、横隔膜が使えるようになり、喉の開き方も変わる。これはまさに、身体という精密な機械の調整作業です。
DIYでピラティス機器? その誘惑
この身体の調整を自宅でも継続したいと考え、目をつけたのがピラティスです。特にリフォーマーというマシンは、体幹を効率的に鍛えるのに最適だと聞きました。しかし、いざ購入を検討すると、その価格に少々ためらいを感じたのも事実です。56歳、単身赴任中のエンジニアとしては、ついつい「これ、自分で作れないものか?」という好奇心が頭をもたげました。
「作れそうな気がする」――これは、私たちエンジニアが新しい技術や未知の課題に直面したときに感じる、ある種のロマンです。実際、インターネット上には自作のピラティス機器を紹介する動画や記事も散見されます。しかし、私はこの「作れそう」という感覚と、「作っていい」という判断の間には、極めて大きな隔たりがあると痛感しています。
強度と安全性の壁
ピラティスリフォーマーは、ベッド状のフレームにスライディング台が乗り、スプリングの張力を利用して運動する器具です。体重をかけた状態で反復運動を行うため、木材、鉄、アルミといった各素材の選定はもちろんのこと、それらを結合する溶接やボルトの強度、さらにはレール部分の精度が極めて重要になります。
万が一、運動中にスプリングが外れたり、スライディング台が脱線したり、フレームが歪んだりすれば、身体を痛めるどころか、大事故につながりかねません。特に、腰や膝といった関節を痛めてしまえば、せっかく始めた登山や、情熱を傾けているボイストレーニングも続けられなくなります。
私は過去に、代官山の整体院で骨格の調整を受けたり、パーソナルトレーニングで体幹の正しい使い方を学んだりしてきました。その経験から、身体のバランスを整えることの繊細さと、それを支える道具の重要性を深く理解しています。安易なDIYで、そのバランスを崩すようなリスクは、決して取るべきではないと判断しました。
プロの技術と製品への投資
結局のところ、私は「作れそうな気がする」という誘惑を断ち切り、「作っていい」という判断を下すことはできませんでした。それは、予算をケチって身体を壊すことが、技術者として最も格好悪い失敗パターンだと知っているからです。
これまで、私は自分の身体への投資を惜しんできません。プロの整体師やパーソナルトレーナー、ボイストレーナーの指導に時間とお金を費やし、解剖学や骨格の知識も学び続けています。それらはすべて、50代からでも身体は確実に変わるという確信と、より豊かな人生を送りたいという願いがあるからです。
このピラティス機器に関しても同じです。DIYという選択肢は魅力的でしたが、安全性と効果を考えれば、専門メーカーが長年の研究と技術を注ぎ込んで開発した製品を選ぶべきだと結論しました。これは単なる出費ではなく、未来の自分の健康とパフォーマンス、そして何より安全への投資です。
まずは体験、そして最適な一台を
来月8月5日には、いよいよマシンピラティスの体験レッスンが控えています。実際にリフォーマーに触れ、その負荷や可動域を自分の身体で確かめてから、最適な一台を選びたいと考えています。
私は現在、横浜の自宅と京都の単身赴任先を行き来する二拠点生活を送っています。まずは、コンパクトに収納できる折りたたみ式のリフォーマーを京都の部屋に導入し、毎日の体幹トレーニングに励むつもりです。横浜の本宅への導入は、妻の明美さんとじっくり相談してからになりますが、これもまた、身体への投資を家族と共に考える良い機会だと捉えています。
50代からの身体改善は、一朝一夕にはいきません。しかし、プロの知識と、信頼できる道具に投資することで、着実に、そして安全に、理想の自分へと近づけるはずです。安易な節約に走らず、本当に価値あるものにリソースを投じる。それが、私がこの年齢になってたどり着いた、身体との向き合い方です。
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