週2回×12週、13万2,000円を払った先で見たもの
ボイスラボ渋谷で週2回、12週間、計24回のレッスンを契約した。月謝は1回5,500円で、総額13万2,000円。安くはない金額を払った以上、教科書通りに真面目にやるつもりだった。
滑舌の変化は毎回、測定アプリ「こえチェック」でスコア化して記録した。数字で見れば、フォームが機能しているかどうか言い訳できないと思ったからだ。
鼻から4秒、吐いて8秒――前半6週間の停滞
最初の6週間は、教わった通りの腹式呼吸を徹底した。鼻から4秒吸って、8秒かけて吐く。お腹に手を当てて膨らみを確認し、背筋を伸ばし、教科書のフォームを一切崩さない。
結果は、こえチェックのスコアが38点から41点。ほぼ横ばいだった。しかも練習を重ねるほど、喉の奥が締まる感覚があった。正しくやろうとするほど声が詰まる。この矛盾に、正直かなり苛立った。
フォームを崩した瞬間、声が変わった
後半6週間は開き直った。教科書のフォームを一旦脇に置き、自分が「今、通っている」と感じる出し方を優先することにした。吸う秒数も吐く秒数も気にせず、喉の力を抜く感覚だけを頼りにした。
結果、こえチェックのスコアは67点まで伸びた。26ポイントの上昇である。家族に「最近、声が聞き取りやすくなった」と言われたのもこの時期だ。フォームを守っていた前半では一度も言われなかった言葉だった。
数字で見る「フォーム期」と「感覚期」の差
| 項目 | 前半6週間(フォーム重視) | 後半6週間(感覚重視) |
|---|---|---|
| こえチェックスコア | 38→41点 | 41→67点 |
| 喉の体感 | 締まる感覚あり | 力が抜けて楽 |
| 家族の反応 | 特になし | 「聞き取りやすい」 |
13万2,000円という総額に対して、前半6週間だけを切り取れば正直「高い」と感じた。ただ後半の伸びを含めれば、費用対効果は納得できるものになった。
なぜ50代の喉には「正しいフォーム」が仇になるのか
この逆転現象について、ボイストレーナーの田中彩子氏(仮名)に聞くと、「50代は喉周りの筋肉が硬くなっているため、教科書フォームがかえって喉を締める場合がある」との指摘をもらった。
日本音声言語医学会の資料でも、加齢に伴う喉頭筋の硬直は40代後半から進行し始め、50代では標準的な発声フォームが逆効果になるケースが報告されているという。20代・30代の柔らかい喉を前提に作られたフォームを、硬くなった喉にそのまま当てはめれば、無理が生じるのは当然かもしれない。
同じ教室に通う50代仲間12人に聞いてみた
自分だけの特殊な結果ではないかと気になり、同じ教室に通う50代男女12名にアンケートを取ってみた。すると7名が「フォームより出た声の実感を優先した方が上達を感じた」と回答した。少人数の調査ではあるが、半数以上が同じ体感を持っていたことは、自分の実測結果を裏付ける材料になった。
これからボイトレを始める50代へ
体験レッスンの段階で、トレーナーに「フォームを崩していいか」を相談できるかどうかを確認しておくといい。これは重要な見極めポイントだと思う。
もう一つの目安は期間だ。最初の2〜3週間でこえチェックのようなスコアに伸びが見えなければ、フォームを疑って感覚重視に切り替える相談をしてみる価値がある。13万2,000円を払った本人としての本音を言えば、フォームを盲信し続けていたら、この投資は半分も回収できなかったと思う。
会議で聞き返される回数を減らしたくてボイトレを始めたが、教科書のフォームか、自分の喉が「通る」と感じる感覚か。50代の喉にとって、正解は一つじゃない。
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