曲を先に置く、という展示の組み方
最初は小説を書き終えてから曲と絵を発注するつもりでした。ところが試しにSuno AI(v4.5)で曲を先に作ってみたところ、その曲が持つ空気の質感に合わせて小説の展開を後から微調整した方が、PV全体としての一体感が明らかに強くなりました。
展示室の壁の色を先に決めてから絵を選ぶような感覚です。物語というキャンバスの上に曲を乗せるのではなく、曲という下地の上に物語と静止画を筆致として重ねていく。今回の制作だけでの発見ですが、この逆算の順序は次の作品でも試すつもりです。
制約の中で選ぶという技術
Sunoの無料プランは1日50クレジットまで、1曲あたり約10クレジット消費するので、実質1日5曲までしか試作できません。潤沢とは言えない枠ですが、フリー素材サイトを2時間かけて漁っていた頃と比べると、選曲にかかる時間は15分まで縮みました。
制約があるからこそ「なんとなく良い曲」で妥協せず、狙った空気感に近いものを絞り込んで選ぶ姿勢が自然と身についた気がします。数を出せない分、1曲ごとの聴き込みが濃くなりました。
静止画はMidjourneyで12枚。月額10ドルのBasicプランの範囲で収まりましたが、狙った構図が出るまで平均7回のリトライが必要でした。使用モデルはV5.2とV6を両方試し、今回の作風ではV5.2の方が意図した雰囲気に近く、採用率は体感で3割ほど高く感じました。V6が劣るというより、今回描きたかった質感との相性の問題だと思っています。
| 工程 | ツール | 費用目安 | 体感の手間 |
|---|---|---|---|
| 作曲 | Suno AI v4.5 | 無料枠内 | 1日5曲までの絞り込み |
| 静止画12枚 | Midjourney Basic | 月額10ドル | 平均7回のリトライ |
| 動画連結 | CapCut | 無料枠内 | 5.5時間・全体の約4割 |
つなぐ作業に食われた5.5時間
一番の誤算はここでした。AIツールを組み合わせれば劇的に時短できるだろうという期待とは裏腹に、CapCutでの動画連結だけで14時間中5.5時間、約4割を費やしました。
特に苦しんだのはトランジションの調整です。静止画一枚一枚は美しく仕上がっていても、曲のテンポに合わせて切り替えのタイミングと効果を揃えないと、途端に安っぽく見えてしまう。AIが出してくれるのは素材までで、その素材同士の継ぎ目を美しく整える作業は、結局のところ人間の手仕事でした。
正直に言うと、この工程を甘く見ていました。作曲と画像生成の時短効果ばかりに気を取られ、つなぎの作業に確保すべき時間を最初の見積もりに入れていなかったのです。次に作るなら、逆算構図法と同じくらい、連結作業のための時間を先に確保しておくつもりです。
映像と楽曲が重なった瞬間
最終的に映像と楽曲がひとつに繋がった瞬間、画面越しでも確かな高揚感がありました。合計制作時間約14時間、実費約3,200円。安くはない手間ですが、一本の作品として成立したという実感の方が大きく残りました。
この記録は『現代の詩集』プロジェクトの一環として続けていく制作ログの一つです。次に手がける作品では、つなぎの工程にもっと余白を持たせた構成を試してみようと思っています。もし自分でPVを作るなら、まずは曲から置いてみてください。物語も絵も、その空気の上でこそ形になっていく気がします。
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