「1位」にまた釣られた話
家に帰って読み始めたら3割くらいで止まってもうた。よう考えたら、うちの本棚、そういう「話題やから買うた本」の積読が結構な数、並んどるんやわ。読書メーターとかのユーザー調査でも、ランキング頼みで選んだ本の読了率は3割程度にとどまるいう結果があるらしくて、ワイだけちゃうんかいと変な安心と、ちょっとした居心地の悪さを同時に感じたんや。
SNSで話題になってる本を読んでも、なんや自分の興味とズレとる。かというて「みんなが読んでる本」を追いかけるのやめたら、次に何読んだらええか分からんくなる。この堂々巡り、うちらだけの悩みちゃう気がしてきてな。
その「1位」、実は今日だけやで
そもそも「ベストセラー1位」て、うちらが思うてるほど大層なもんちゃうかもしれへん。要するに、実際の販売数は非公開で、24時間ごとにコロコロ入れ替わるカテゴリ内のシェアを示しとるだけなんや。しかもそのカテゴリ、8,000以上に細かく分かれとるちゅう話やから、「1位」の希少性は見た目ほど高くないんちゃうかと思うわ。
初速のマーケティング費用――帯とか広告露出とかや――で順位が決まる面が大きくて、内容の良し悪しとはあんまり関係ないんちゃうかという指摘もあるみたいや。ここは断定はできんけどな。
江戸の貸本屋の「見立て」商売と比べると、こんな感じになるんちゃうか。
| 項目 | 現代のベストセラー表示 | 江戸の見立て商売 |
|---|---|---|
| 見ているもの | カテゴリ内シェア | 個人の貸本帳(貸出履歴) |
| 更新頻度 | 24時間ごと | 顧客が来るたび |
| 個人差の反映 | ほぼなし | 前提そのもの |
| 評価基準 | 初速の売れ行き・露出 | 過去に何を借りて満足したか |
| 継続年数 | 数年〜数十年 | 200年以上とされる |
名古屋の大惣、二万冊の帳面
江戸中期には、江戸市中だけで貸本屋が約650〜800軒あったとされとる(『貸本屋の研究』なんかの江戸文化研究にもとづく推計らしいから、確定した数字やないみたいやけどな)。1軒あたり顧客150〜300人を抱えて、店主が一人ひとりの好みを覚えて「次はこれ、どうや」と手渡しで勧めとったそうや。
なかでも名古屋の大惣(大野屋惣八)は、最盛期に蔵書2万冊超、会員1,000人規模を誇っとったと伝えられとる。すごいのは、この規模を「顧客ごとの貸本帳」という紙の帳面だけで回しとったことやわ。誰が何を借りて、何を気に入ったか。それを一冊ずつ紙に書き溜めて、次の一冊を選ぶ材料にしとったんや。
この貸本屋文化、明治中期になって出版制度が整備されたり規制が強まったりして急速に衰退したらしく、大惣も明治22年(1889年)頃に廃業したと伝えられとる。200年続いた帳面商売が、時代の変わり目であっけのう終わったんやなと思うと、なんや感慨深いもんがあるわ。
みんなの本とあんたの本
ここで気づいたんやけど、ランキングと見立て商売、見とるもんが根本から違うんやな。片方は「みんなが読んでる本」を映す鏡、もう片方は「あんたが次に読むべき本」を探す道具や。
見立て商売が200年も続いたんは、江戸の店主が人情深かったからだけちゃうと思うわ。一人の顧客を長く通わせる方が、その都度新しい客を探すより商売として効率ええからやろ。帳面に履歴を残しとけば、次に何を勧めたらええか迷わんし、客も「ここに来たら外れがない」と思うて通い続ける。えらい合理的な仕組みやったんちゃうか。
かというて、ランキングが全部あかんわけでもないと思うんや。今どんな本が動いとるか、世の中の空気を知る手がかりにはなる。うちらに足りひんのは、それを鵜呑みにせんと、自分の帳面と付き合わせる視点なんやろな。
今日からつける読書帳
ほな、うちらも自分だけの貸本帳、こしらえてみたらどうやろ。ノートでもスマホのメモでも何でもええから、こんな項目を書き留めるだけや。
| 記録項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 読んだ本 | タイトル・著者 |
| なぜ手に取ったか | 帯で見た/友人に勧められた等 |
| 良かった点 | 読んでて面白かった具体的な箇所 |
| 次に読みたい方向性 | もっと同じテーマを深掘りしたい等 |
ステップとしては、①読み終えたその日のうちに4項目を3行だけ書く、②月に一度読み返して「良かった点」に共通するキーワードを探す、③そのキーワードから次の一冊を選ぶ。この3段階だけでええと思うわ。読書メーターみたいな既存の記録サービスを併用してもかまへんし、紙の手帳でも一向に構わへん。
ランキング閉じて棚を見る
ベストセラーランキングを見るなとまでは言わんよ。世の中の話題を知る参考情報の一つとして、たまに覗くくらいはええと思うわ。
ただ、次に読む一冊を選ぶときは、ランキングより先に自分の帳面を開いてみる。それだけで積読の増え方、ちょっと変わってくる気がするんや。江戸の店主が客の顔を思い浮かべながら帳面をめくっとったように、うちらも自分の読書履歴を眺めながら、次の一冊を選んでみたらどうやろか。
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