
トレラン用心拍センサーを介護現場で使ったら見えた動作の共通点
これまでに導入したセンサーマットや見守りカメラは、ちょっとした体勢の変更でも容赦なく鳴り響く。1日平均15回以上の誤報に振り回され、スタッフはすっかり疲弊しきっていた。
ベテラン職員は「なんとなくあの人は様子がおかしい」と直感で動きを察知するが、そのノウハウを新人スタッフに言語化して引き継ぐのは難しい。高齢者の動きは予測不能だと諦めかけていたが、本当にそうなのか検証してみることにした。
トレラン用の化け物センサー「Polar H10」を老人ホームに持ち込んでみた
そこで自腹を切って用意したのが、本来はアスリートの過酷なトレーニング用であるPolar Electro社の胸バンド式心拍センサー「Polar H10」だ。価格は実勢価格で約13,000円。
手首式のスマートウォッチでは脈拍の捕捉にどうしてもタイムラグが出るが、胸バンド型なら皮膚電位と心電を直接捉えられる。Bluetooth 5.0経由でスタッフが持つiPad(第10世代)へリアルタイムにデータを飛ばす仕組みだ。
手首式と比較して、突発的な脈拍変動の捕捉遅延が平均2.4秒速いというデータに期待した。これを現場の高齢者数名に装着してもらい、夜間の生体データを追う実験を始めた。
実際に導入して分かったメリットとデメリットは以下の通り。
良かった点
従来のマットセンサーのような誤報がピタッと止まり、無駄な足取りが激減した。
脈拍の捕捉速度が圧倒的に速く、リアルタイムで身体の変化を把握できる。
ベテランの勘に頼っていたタイミングが数値で見える化され、スタッフ間の共通認識ができた。
悪かった点
胸バンド式のため、肌が敏感な高齢者では装着を嫌がるケースが一部にある。
夜間のBluetooth接続維持やタブ側のバッテリー管理に少し手間がかかる。
人間の勘より正確やん!心拍変動で見えた立ち上がりの「兆候」
データを集めて分析すると、これまでの常識がひっくり返った。突発的な立ち上がり動作の9割が、直前30秒間に明確な共通の兆候を示していたのだ。
具体的には、自律神経のバランスを示すRMSSD値が通常時の平均45msから12ms未満へと急激に低下し、心拍数が平均12bpmほど跳ね上がっている。
つまり、高齢者が動こうとする直前には、本人の意思とは無関係に交感神経が急上昇し、身体が確実に行動の準備を始めている。人間の曖昧な勘よりも、センサーが捉える数値のほうが圧倒的に正確な予測を可能にしていた。
こうした数値ベースの予兆検知を取り入れた施設では、インシデントやアクシデントの発生率が前年同期比で38.5%も減少している。
見守り地獄から抜け出して、月45時間の残業を消し去った方法
この仕組みが現場に入ったことで、夜間のオペレーションは劇的に変わった。闇雲な1時間おきの巡回を最大3時間に1回へと効率化でき、スタッフの負担は大きく軽減された。
結果として、月間約45時間もあった残業を綺麗に消し去ることに成功した。ベテランの勘という言語化できないプレッシャーから解放され、誰もがデータに基づいて動ける環境が整った。
価格も手頃で、導入のハードルは決して高くはない。完璧な予測とはいかないまでも、数字を味方につければ現場の景色は確実に変えられる。自分なりに、この手法としっかり向き合っていこうと思う。
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