先週末、20万円以下で買える消費者株を探そうと決算短信のPLとBSを一通り読み込んだ。数字は並んでいるが、正直なところ「この会社が本当に伸びているのか」という実感がまるで湧かなかった。

決算書だけでは見えない

証券会社のレポートや四季報に載っている情報は、すでに株価に織り込まれている場合が多い。自分だけの判断材料にはなりにくいというのが実感である。

そもそも証券アナリストの決算予想は、四半期ごとの発表に依存する構造上、店舗の変化を反映するまで平均1〜2ヶ月のタイムラグが生じる傾向がある。この間に先回りするには、決算書より速い情報源が要る。

時価総額20万円以下(単元株ベース)で買える消費者関連銘柄は、東証プライム・スタンダード合計で約180社ある。そのうち実店舗を持つ業態は約65社に絞られる、という理解で銘柄群を眺めてみた。65社を机上で追うより、通勤や買い物の動線上にある店を実際に見に行く方が早いと気づいたのが、今回の出発点である。

現場観察の3ステップ

現場に出る際に決めているのは、以下の3ステップだ。いずれも「決算書に数字として出る前の変化」を拾うための定点観測であり、モデルケースとして挙げる企業名は手法を理解するための参考事例に過ぎない。これらの銘柄への投資を推奨するものではない点は先に断っておく。

| ステップ | 観察タイミング | 数える対象 | シグナルの意味 |
|---|---|---|---|
| ①開店30分観察 | 平日午前10時〜10時30分 | 来店客数 | 前月比の増減傾向 |
| ②レジ横POP調査 | 来店時随時 | 新商品の陳列位置 | レジからの距離の変化 |
| ③駐車場回転率 | 夕方17時台 | 駐車場滞在時間 | 購買行動の変化 |

ステップ1は開店30分観察である。 平日午前10時〜10時30分の来店客数を数える。あるドラッグストア(モデルケースとしてスギ薬局 川口店)では、来店客数が前月比で2割増となっていたケースがあり、翌四半期の既存店売上高が前年比+6.8%だったという傾向が見られた。

ステップ2はレジ横POP調査である。 新商品がレジから3メートル以内に陳列移動しているかを確認する。総菜メーカーの店舗(モデルケースとしてロック・フィールドのRF1)では、陳列位置の変化が見られた四半期に営業利益率が0.9ポイント改善していたケースがあった。

ステップ3は駐車場回転率チェックである。 夕方17時台の駐車場滞在時間を見る。喫茶チェーン店舗(モデルケースとしてコメダ珈琲 木更津店)では、滞在時間が12分から9分に短縮する一方、テイクアウト比率が18%から27%へ上昇していたケースがあり、翌決算で売上高が予想を4.2%上回った例があった。滞在時間の短縮は一見客足が鈍ったようにも映るが、テイクアウト比率の上昇という別の好材料が隠れていることもある。数字は一面だけで判断しないよう気をつけている。

思えばワークマンも、2019年頃から個人投資家の間で「動線観察」による先回り買いが話題になった銘柄だった。当時の株価は3年ほどで約4倍になったと記憶している。現場観察という手法自体は目新しいものではなく、地道な積み重ねの延長線上にあるものだと捉えている。

RSIで買い時を数値化

ここまでの3ステップはあくまで仮説を作る作業である。「この店は伸びそうだ」という感覚を持っただけでは、まだ発注する段階ではない。

そこで使うのが自作のRSIツールだ。現場観察=仮説生成、RSI=執行タイミングの判断、という役割分担をはっきり分けている。現場で好材料をつかんでも、株価がすでにRSI70以上の買われすぎ水準にあれば飛びつかない。逆にRSIが30以下の売られすぎ水準に近づいているタイミングであれば、仮説と数値の両方が揃ったと判断する材料になる。

為替の動きも無視できない。円安局面では内需型の消費者株に資金が向かいやすい傾向があり、逆に円高局面では資金が薄れやすい。現場で仮説を掴んだタイミングが、マクロの資金の流れとかみ合っているかどうかも、RSIの数値と合わせて確認するようにしている。

観察の注意点と限界

現場観察は一度きりでは仮説として弱い。最低3回以上は同じ店舗・同じ時間帯で定点観測し、傾向として再現するかを確かめてから仮説を固めるようにしている。観察対象も1業態に絞り込んだ方が比較がしやすい。

タイミングとしては、決算発表の1〜2ヶ月前に絞って観察するのが実務上効率がよい。それより早いと変化が現れておらず、遅いと決算発表に間に合わない。

なお、本記事で挙げたスギ薬局、ロック・フィールド、コメダ珈琲などの企業名・数値は、手法を理解してもらうためのモデルケースであり、実際の観測データの再現性を保証するものではない。特定銘柄の売買を推奨する意図は一切なく、投資判断は必ず読者自身の責任において行っていただきたい。

数字の羅列だった決算書が、店を見た後では違って見えるようになった。次の決算発表が出る前に、まずは自分の生活圏の店を一つ、定点観測してみてはどうだろうか。

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