
冷めた肉と、Instagramという名の聖域
家族でキャンプに行くたび、私はまるで戦場に赴くかのように、大量の道具を車に積み込んでいました。総額で15万円はくだらない高価なキャンプギア。あれもこれもと買い揃えては、SNSで見たような完璧なキャンプ飯を作ろうと必死だったのです。
凝ったレシピを再現しようと、調理に45分もかけていました。盛り付けにも時間をかけ、スマホで写真を撮る。でも、撮り終えていざ食べようとすると、せっかくの肉はすっかり冷めてしまっている。そんなことが何度も続くと、「結局、家で食べる方が美味しいんじゃないか」 と、本末転倒な気持ちになったものです。家に帰れば、大量の使いかけの調味料や出番の少ない調理器具が、収納を圧迫していました。
ダイソーのクッカーが教えてくれたこと
そんなある日、パートの帰り道に立ち寄ったダイソーで、ふと目に留まった110円のアルミクッカー。特に目的があったわけではないのですが、その軽さとシンプルさに惹かれて買って帰りました。次にキャンプに行くとき、試しにこれ一つだけ持っていくことにしたのです。いつも使っていたコールマンの約1.2kgもあるクッカーセットは、思い切って置いていきました。
結果、驚くほど身軽で、準備も撤収も格段に楽になったのです。特に撤収時間が30分も短縮された時は、正直、少し虚無感に襲われました。今まで何に時間をかけていたんだろう、と。でも、同時に、肩の荷が下りたような安堵感も覚えました。余計なプライドや見栄が、どれほど自分を縛っていたのか、その時初めて気づいた気がします。
ライフの旬と、塩だけの夜
道具を減らしたことで、自然と食材や調味料もシンプルになりました。近所のスーパー「ライフ」で、その時々の旬の野菜や肉を少しだけ買う。調味料は、塩、胡椒、オリーブオイルの3種類だけに絞りました。これで本当に美味しいのか、最初は不安でした。
ところが、これがどうでしょう。余計な味付けがない分、食材本来の味が際立つではありませんか。焚き火の炎で焼いただけのシンプルな肉や野菜が、こんなにも美味しいものかと、家族みんなで感動しました。調理時間は15分ほど。食事にかかる費用も、以前の1泊2,000円から、今では800円くらいに抑えられています。
余談ですが、先日、実母のデイサービスの手続きで役所に行ったのですが、書類の多さにうんざりしました。何でもかんでも複雑に考えすぎると、肝心なことを見失ってしまう。キャンプ飯も、もしかしたら同じなのかもしれませんね。
道具を捨て、自分を拾うキャンプ
キャンプを通して、私は少しずつ変わっていったように思います。たくさんの道具や、SNSでの「いいね」を追い求めることが、本当の豊かさではないと気づきました。高価な調理器具が必ずしも料理の満足度を高めるわけではない、という話を聞いたことがありますが、まさにその通りだと実感しています。
本当に大切なのは、家族と過ごす時間、自然の中でゆっくりと流れる時間、そして、誰にも見られない場所で、五感を使って食事を味わうこと。キャンプ飯の準備や片付けが楽になったことで、娘や夫と話す時間が増えました。娘に「ママのキャンプ飯、最高!」と褒められた時、これまでの努力が報われた喜びと、新しい自分へ向かう強い意欲を確信しました。
自宅の収納も、以前よりずっとスッキリしました。道具を減らすことは、自分の人生の優先順位を整理することと似ているのかもしれません。これからも、私は自分だけの焚き火を囲んで、飾らない、本当の味を噛みしめていきたいと思っています。完璧な答えは出ないけれど、自分なりに向き合っていくことで、きっとまた新しい発見があるはずです。
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